第3話 おうちに帰ろう〜なお、美少女な姉と妹がいるようだが?
入院して3日が経った。
男女比率がおかしい世界で生きていけるかと心配していたが、思いのほか周りが優しいので困ることなく過ごせてる。
俺の検診や食事を運んでくれる看護師さんたちの視線が熱いのは気のせいだろう。
「3日間ありがとうございました」
そして今日は退院の日。
たくさんの看護師さんがお見送りにきてくれた。
「まだいてくれてもいいのに……」
院長の吉田先生が名残惜しそうな声を上げる。
吉田先生には色々とお世話になった。貞操逆転世界の知識を教えもらったし、これでこの世界の常識は知れた。
「身体はもう大丈夫ですし、いつまでもこの病院にいるのは迷惑ですから」
と、まぁこれも本当のことだが、俺が入院したことでどうやらこの病院に俺目当てで入ってきた人から逃げるためでもあるがな。
「皆さん親切にしてくださってありがとうござした!」
そう言ってはにかむと、
「「ブフゥゥゥーー!!」」
顔を赤らめ砕ける看護師さんたち。
この光景も今日で最後かぁ……。
「あっ、あの笑顔は反則〜」
「い、イケメン……」
「わ、私もう、死んでもいいかもぉ……」
口々に満足げに呟く看護師さんたち。
そんな姿に苦笑しながら、手を振る看護師さんに見送られ、病院の外に出た。
久々に浴びる太陽の光。ぐーと腕を伸ばす。
そんなことをしていると、俺の前に一台の車が止まった。
「はぁ~君退院のおめでとう! さぁ、車に乗って。我が家へ帰りましょう!」
「うん、分かった」
◆
家に到着したのだが………
「でっ、でか……」
目の前には大きな建物がある。例えるならどこかのお金持ちの別荘だ。
ここはほんとに我が家なの? こんな家テレビで放送されるお金持ちの家じゃないか?
「ふふっ。すごいでしょ。政府の人がはぁ君のために建ててくれたの。なにせ、貴重な男の子だからね」
政府すげぇな。男の優遇って一体どのくらいあるんだろう。
「さ、中に入って」
「あっ、うん。お邪魔しま……じゃなくてただいまー」
中に入るとさらに凄かった。玄関は広いし、廊下は長い。これじゃあ使わない部屋がありそうだ。
「はぁ君。家に帰ってきてもやっぱり思い出せない?」
「あっ、うん。ごめんね母さん……」
思い出せなというか中身が別の人物だからというか……。
「グフっ……い、いいのよ。はぁ君が元気なら。ほんと、はぁ君は本当カッコイイわ〜」
頬を上気させ、何か言っている母さんはさておき。
「記憶を失う前の俺ってどんな子だったの?」
まずは鳴海隼人という人間が気になる。見た目的なことをいえば暗い印象だ。
「はぁ君は昔は明るい子だったんだけど、最近は女嫌いがひどくてずっと引きこもり状態だったの。最近では私や真依ちゃん、加奈ちゃんともまともに話してくれなくなってね……」
悲しげに語る母さん。
だから俺がお母さんって呼んだ時喜んでいたのか。
「でもね、お母さんたちは全然気にしてないよ! こうしてはぁ君が家にいるだけで嬉しいから」
「……そっか」
無理に浮かべる笑顔を見て、俺は覚悟を決めた。
——俺は鳴海隼人として次は家族に悲しい思いをせないようにする、と。
「……母さん。俺、記憶がないけど、今からでもたくさん思い出を作っていきたい。ダメかな?」
「っ~~~!」
母さんの顔が赤くなり、そして目には涙を浮かばせている。
「母さん、おいで」
手を広げた俺の手の中に母さんは飛び込んできた。その背中をぎゅっと抱きしめる。
「私本当に幸せな母親だわ。だってはぁ君にハグされているんですから」
涙ながらに今度は本当の笑顔を浮かべる母さん。
いいお母さんじゃないか隼人よ。無事、親子の仲も取り戻せた訳だし、気になることを質問しよう。
「ところで母さん」
「どうしたのはぁ君?」
「さっき真依ちゃんと加奈ちゃんって言ってだけれど、俺と母さん以外に他に家族がいるの?」
「2人ははぁ君のお姉ちゃんと妹だよ。2人とも、私の自慢の美少女姉妹なのよ〜」
美少女姉妹がいるんだと!? 隼人、お前恵まれすぎだろっ!!
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