第4話 家族団欒編〜いや、全然団欒してないようだが?

 隼人には美少女な姉と妹がいて、姉は高校3年生、妹は中学3年生らしい。ちなみに俺は今年から高校2年生だとか。


 時刻は12時を過ぎ、昼飯を食べようという話になった。

 母さんはテイクアウトを頼もうとしたが、冷蔵庫の材料も十分あるし、ここは俺が昼飯を作ることにしよう。


「母さん、メニューは何がいい? 俺、作るけど」


「えっ、はぁ君が作ってくれるの!?」


「うん」


「えと、えーと……。はぁ君が作る料理ならなんでもいいよ!」


「じゃあ簡単だけど、チャーハンと卵スープでいいかな?」


「うんっ! はぁ君のチャーハンと卵スープ楽しみにしてるね♪」


 その後、出来上がったチャーハンと卵スープを2人で食べ始めた。

 我ながら美味しいチャーハンだと思う。卵スープもあっさりしていて美味しい。

 ただ、母さんは「食べるなんてもったない! 保管したい!」なとか言っていて写真を撮りながら中々食べ始めなかったが、最終的には「美味しい美味しいよ〜」と涙を流しながら完食してくれた。

  

「はぁ君、2人が帰ってくるまでお部屋で休んどいていいよ~」


 今日は退院の直後で色々疲れたしお言葉に甘えさせてもらおう。


「じゃあ少し仮眠するよ。姉さん達が帰ってきたら起こしてもらえないかな?」


「分かったわ。おやすみはぁ君」


 母さんに見送られ俺は2階にある隼人の部屋に入った。


「意外と片付いてるな」


 部屋は黒と白の普通のかっこいい部屋だった。広さはだけは異常だけど。

 

 俺は部屋に置いてある鏡を見た。


「前髪長いな。少し切っていいかな」


 目に当たりそうで邪魔なんだよな。すまない隼人。髪切らせてもらうわ。


 パチンパチンと挟みで切る。

 切り終え再び気味をみると、爽やかで健康的な印象になった。


「ふわっ……寝よ……」


 突然の睡魔に襲われて俺は、そのままベッドに眠りついた。



「んっっ……。今、何時だ……? ごっ、5時!? 寝過ぎた……」


 スマホで時間を確認し、慌ててベッドから起き上がる。

 外を見ると夕焼けが綺麗だった。


 そろそろ姉さん達が帰ってくる頃と思い、リビングに行くことにした。


『お母さん。隼人退院したって~』

『お兄ちゃん大丈夫?』


 リビングに入ろうとした時、中から聞き覚えのない女の子の声がした。どうやら姉さん達が帰って来たようだ。

 会話を邪魔するのあれなので、もう少しだけ外で聞くことにした。


『えっ!? 隼人が記憶喪失!?』

『私達との思い出も覚えてないの? そんな……』


 ガッカリした声が聞こえる。ほんと申し訳ない……。


「でもね、はぁ君明るくなったんだよ。それにお昼ご飯作ってもらったし」


『『えっ、料理したの!?』』


 隼人、お前はどんな人間だったんだよ。自炊なんて当たり前だろ?


 会話もいい感じで途切れたのでそろそろリビングに入ることにした。


「あっ! はぁ君———って、髪の毛切ってる!?」


 まぁ確かに髪を切った後はイメージが変わることがある。しっかりと整えれば、ガラッと雰囲気は良くなるものだ。

 切ってみて分かったが、隼人は顔がいい。いわゆるイケメンくん。


「しゃ、写真とらなとぉぉ〜」


 パシャパシャとカメラを撮る母さんに苦笑し、目の前で目を見開いている姉さん達に挨拶をすることにした。


「お帰り姉さん、加奈」


 そう声を掛けると、2人がワナワナ震え出した。


「隼人が……」

「お兄ちゃんが……」


『姉さんって』『加奈って』

『『呼んでくれたぁぁぁ!!』』


 おい、隼人。お前はどういう人間だったんだ!



 2人の興奮が落ち着いた後、改めて自己紹介することにした。


「私は鳴海真依。君の一つ上の姉だよ」


 真依さんは艶やかな灰色のストレートに、吊り上がった茜色の瞳。一見、気の強い印象を思わせるが、今はニコニコと笑顔が絶えない優しい人だ。


「お兄ちゃんお兄ちゃん! 私は鳴海加奈だよ。お兄ちゃんの一個下の妹だよ~」


 加奈ちゃんは灰色のツインテールで茜色の垂れ目の人懐っこそうな子だ。

 

「俺は鳴海隼人です。記憶は失っているけど、まあ仲良くしてくれると嬉しいです。よろしく」


 いい終わり、ニコッと笑みを浮かべると……


「「「ブハァァ!!」」」


 姉さんと加奈、さらに母さんまで顔を真っ赤にした。


「隼人、かっこ良すぎる……」

「お、お兄ちゃん、その笑顔は反則……」

「はぁ君、髪切ってさらにイケメンさんだぁ……」


 なぜ母さんまで顔を赤らめている?


「じゃあ今日はお祝いパーティーをしましょう」


「「賛成〜!!」」

 

 その夜、寿司、ピザ、ローストビーフ、ハンバーグ、グラタンなど四人では食べきれないほどの豪華な食事が出された。楽しい夕食になるはずが……。


「隼人の隣は姉である私なの!」

「お兄ちゃんの隣は私!」

「いいえ。はぁ君の隣はお母さんのものです!」


 なぜか俺の隣の席を巡ってそんな口論が起こっていた。


 三人の口論を尻目に、ローストビーフを一口食べた俺はこう思う。


 家族団欒しようよ……と。

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