第14話 学園生活〜女の子より全然可愛いのだが?
ついに授業を全部終えて放課後となった。
みぞれさんはというと委員長会議で席を空けていた。そのせいもあってか俺は今、女の子達に囲まれて質問攻めされている。
みぞれさんがいればみんな大人なしくなるのだが……。
この状況をどうしようか考えていたその時だった。
「きゃぁぁぁ! みーくんよ!」
「か、可愛いっ〜! 天使、天使よ〜」
突然、廊下からそんな歓声が上がった。しかし、女の子達に囲まれているせいでその人物を確認することができない。
「あ、あの……」
そんなか細い声が聞こえたと思えば女の子達がバッと道を開けた。
ようやくその人物を確認できた。
ミルキーブランの髪にピンクの瞳、制服の中にはパーカーを着ている。小柄で可愛い女の子———と思ったが下を見て違うと確信した。
下にはズボンを着ている。
この学園は男子はズボン、女子はスカートを着るという決まりがある。
ということは……
「君、男?」
恐る恐るそう聞いてみるとその男の子は顔をパァァァと輝かせた。
どうやら間違っていないようだ。
「うん、僕は男だよ!」
そう言われてもう一度容姿見る。
身長は150㎝台くらいかな?やはりパッと見は可愛らしい女の子しか見えない。これが男の娘というものか。
「初めてまして。僕の名前は
と満面の笑みで挨拶してくれた。
「て、天使スマイル!」
「写メ撮らないと!」
「もう無理……」
周りの女の子達が歓声を上げたり、中には鼻血を出して倒れる子もいた。
ちなみに俺も一瞬、ドキッとした。
「お、俺は鳴海隼人だ。こちらこそよろしく頼む、湊」
そして2人で握手を交わす。
「「「「きゃぁぁぁぁぁあ!!」」」
するとまた歓声が上がった。さっきよりも大きい。
「王子と天使が握手したわ〜!!」
「歴史的場面よ!写真撮らなきゃっ!」
「王子×天使、あり……」
一つ物騒な単語が聞こえたような……。
ほんと、この世界では男の一つ一つの動作が————
「ひっ……!?」
突然、隣からそんな悲鳴が上がった。湊のものである。そんな悲鳴を上げたと思えば俺の背後に隠れた。
「ど、どうした湊……?」
俺の背中に顔を埋めるようにしている湊に声を掛ける。
「ぼ、僕、女の人が苦手で……」
確かに俺の制服を握っている手は小刻みに震えていた。そして目には涙を溜めていた。
可愛い……。
はっ! まてまて、俺にはそっち系の趣味はない! でも湊は普通に女の子並みに可愛い。
「み、みんな、そんな湊を睨まないでくれ」
これ以上怯える湊を見てられないのでそう促す。するとみんなは俺たちの周りから距離を置いてくれた。
ほっ、良かった……。
「相変わらず教室には沢山のお客様がいますね——って、あら? こんにちは小条さん」
委員長会議が終わったのか、みぞれさんが戻ってきた。
「あっ、冬瀬さんこんにちは」
あれ? 湊、女の人苦手って言ってなかった?
「湊、みぞれさんは平気なのか?」
「う、うん。冬瀬さんは怖くないよ」
あの湊が平気ならみぞれさんはやっぱりいい人ということか。
「隼人くんはもう小条くんとお友達になったですか?」
「ああ、俺たち友達だよな、湊」
「う、うん! 大親友だよ!」
「あらあら」
そんな俺たちの姿を未だ見届けている女の子達。今はなんか見守っているって感じだな。
姉さんには女の子はみんな理性がなく、すぐ食べられてしまうと言われていたが、そんなことはなかったな。みんないい人そうだし。
そんな和やかな雰囲気を壊す者がいた。
「おいお前! 俺様より目立つとは何事だ!」
突然、教室の入り口で怒号を上げる低い声がして、声の方向を見ると腕を組み、怒っている様子の男がいた。
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