第20話 妹ならあんな事やこんな事、してもいいもんね!
「お兄ちゃん狂ってなに?」
お兄ちゃん狂を設立しようと言い出した楓音ちゃんに聞くと、ソファーから立ち上がり、俺の目の前に移動してきた。
「まずトーくんはめちゃくちゃカッコよくてモテます」
「お、おう?」
「加えて優しくて愛想も良くてさらにモテます」
「お、おう?」
「だから当然、女の子からのアプローチが激しい。いくら一つ屋根の下で暮らしているという有利な状況でも、油断できない」
「お、おう?」
「そこで、お兄ちゃん狂を設立し、私たち妹だけ特権を作りたいと思います!」
「パチパチパチ〜」
「なるほど。まあそれなら……」
「俺だけ置いてきぼり!?」
一連の話を聞いていたが、最後までハテナしか浮かばない。
楓音ちゃん汐音ちゃんとはともかく、加奈は何で納得してるの!?
「お兄ちゃん狂には3つのルールが存在するの。これはトーくんのためでもあるんだよ?」
「俺のため?」
「うん! トーくんともっと仲良くなるためと、トーくんを守るため」
「おお? とにかくルールの説明を聞こうか」
「任せて! お兄ちゃん狂三箇条、1つ目は『妹の事を最優先』だよ!」
「最優先?」
「例えばカノが『早く帰ってきて』ってメールしたら早く帰ってくるとか、妹の命令は極力最優先すること!」
早く帰ってきてかぁ……可愛いな。
「じゃあ次はシノが説明するよ〜」
垂れ目が特徴的な
「お兄ちゃん狂三箇条、2つ目は『一日一回以上はハグする』だよ〜」
「は、ハグ?」
「ハグにはね、ストレス軽減や癒し効果があるんだって。だから女の子に追いかけ回されて疲れたトーくんを私たちが癒すの〜」
なるほど。それはありがたいな。でも母さんと姉さんが自分もと言いそうだな。
「最後は加奈ちゃん〜。どうぞ〜」
「えっ、ほんとに私がアレ言うの!?」
何やらアワアワ慌てている加奈。顔もほんのり赤い。
「お兄ちゃん狂三箇条、3つ目は……『3人の中の誰かと毎日添い寝する』」
「なっ……!?」
そ、添い寝だと……!? つまり隣で一緒に寝るという……。
「1と2はいいと思うけど、3番はまずいでしょ……?」
「そうかな? カノは良いと思うよ?」
「シノもなんの問題もないよ〜?」
あれ? 女の子って男に対して免疫が弱かったんじゃなかったけ? なのに楓音ちゃん汐音ちゃんは、さっきから自分から積極的に俺にボディータッチしているような……。
「なぁ加奈。なんで2人はこんなに普通に接してるだ? 女の子は男に免疫なかったんじゃないの?」
「2人が最後にお兄ちゃんに会ったのは小学生の頃で、まだその時のお兄ちゃんは優しかったというかぁ……。多分、その時の感じで接してると思う」
つまり、冷たい頃の俺をあまり知らないから、普段通り接することができるということか。貞操観念逆転の世界に来てからは、こういった反応を中々されなかったから若干違和感あるんだよな……。
「話を戻すが、添い寝はする必要ないんじゃないの? ハグで十分だろ?」
「ダメ! 添い寝が1番大事なの! マーキングする!」
「ま、マーキングって……。そんなことしなくても、俺はしばらく女の子から距離を置こうと思うし……」
「お兄ちゃんは昨日、女の子に襲われそうになって今ちょっと女の子に対して若干の抵抗があるらしいの」
女の子たちに囲まれてどこかに連れて行かれそうになった時に、力差で負けて絶望的だったよなぁ……思い出すだけでも寒気がする。
「へぇー。トーくんが襲われそうになったねぇ……」
「私たちのトーくんに手を出そうとする人がいるんだぁー…」
2人の目に光が無くなり、何やらブツブツ言っているが俺は関係ないよな?
「と、ということで添い寝しなくても俺は大丈夫だ!」
「ダメー! とにかく! トーくんは妹優先なの!」
「妹大事! 妹一番!」
2人とも俺の両脇にそれぞれくっ付き、「絶対なの!」とばかりに強くしがみつく。
ま、まぁ加奈と楓音ちゃんと汐音ちゃんなら平気だし、仲を深めるという点ではいいが、そ、添い寝……。
「……わかったよ。まずは一週間やってみる」
俺が渋々承諾すると3人ともパァァァと明るくなった。
「あっ、おばさんと真依お姉ちゃんには添い寝は内緒ね!」
「怒られちゃうから〜」
ちなみにその後、開始1日目でバレて大変だったのは言うまでもない。
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