第23話 もう1人の男の物語 *
「アタシたちを殺すつもりかい?」
「す、すいません」
3人がようやく落ち着きを取り戻した頃、俺は怒られた。裸シャツはこの世界では上半身裸より刺激が強いらしい。なんでも、シャツから見える肌がエロいとか。
ちゃんと制服に着替えた俺は陽茉利さんとみぞれさんと着替えが終わるのを待っていた。
「鳴海君ってよく無自覚とか言われない?」
「無自覚ですか? んー言われた覚えはないですね」
「……これはアレだな。周りが諦めて守っている感じだな」
山路さんが何やらぶつぶつ言っているところで、陽茉利さんとみぞれさんが帰ってきた。
「っ……」
2人の姿に思わず息を呑む。
「あはは、ちょっと恥ずかしいですね」
「これが制服という物ですか」
そう、2人があまりにも綺麗だったから。
女の子の水着制服はというと、紺色のセーラ衣装だった。よく見るとスクール水着をモチーフにしたもので、白色のリボンがまた可愛いな。下はブルマほどの長さしかない。
というかこれ、見ている俺の方もかなり恥ずかしいんですけど……。
「隼人くん、私たちの制服姿どうですか?」
「似合っていますか?」
「2人ともよく似合ってるよ……!」
こんな可愛いバイトの人いたら思わず声を掛けるだろう。
「おやおや? 隼人さんのお顔が少し赤くなりましたが、もしかして私たちの水着制服を見て照れているのですか?」
「女の子の水着姿に興味ある男の子はいないからね」
「隼人さんでも結構初心な反応をされるんですね。なんだか可愛らしいです」
みぞれさんが手を添え、くすくすと笑う。
からかわれて俺の頬はまた赤くなる。
「2人がすごく可愛いんだからしょうがないだろ……っ」
「っ……」
「っ……」
俺の照れた反応に2人は顔を赤らめた。
「いやー、青春だねー」
はははっーと山路は呑気に笑っていた。
「それで、鳴海くんはうちで働くのかい?」
陽茉利さんとみぞれさんは心配そうに俺を見つめる中、口を開いた。
「そうですね。俺は陽茉利さんとみぞれさんがバイトするなら一緒にしたいですね」
チラッと陽茉利とみぞれに視線を向けると、2人とも首を上下にコクコクと振っている。
「隼人くんが無事バイトできるよう私、頑張るね」
「お任せください。私も微力ながら隼人さんをお守りします」
本当に優しい子たちだ。見ず知らずの俺を最初から優しく接してくれて、面倒まで見てくれて。
「でも隼人さん、ご両親には確認取ったのですか?」
「取ってないけど俺には必殺技があるから」
「必殺技?」
「秘技、目ウルウル作戦っていうのを使えば許してくれると思う」
「まぁ、それは強力ですね」
こんな優しい人たちに囲われて俺は幸せ者だ。だからこの世界に来れてかったと思う——。
◆
(???side)
シュゴーシュゴー
……何やら音がする。
「ここは……どこだ……?」
目が覚めると知らない天井。
首を動かし隣を見ると、そこには男の医者と看護婦さん。それと制服姿の男女2人組が立っていた。
「
「蒼!」
「そーくん!」
心配そうにみんな俺に声をかける。
長谷川、蒼……? いったい誰のことだ?
鳴海隼人こと長谷川蒼はまだ知らない。もう一つの物語が始まろうとしていることを———。
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