第29話 み、みんなとデートすることになったのですが……?
「こんにちは隼人さん」
「こ、こんにちは隼人くん」
どうしよう。扉閉めていいかな。
チャイムが鳴って来てみれば、みぞれさんと陽茉利さんが夏らしい服装で立っていた。
凄く似合っていて、可愛らしいけど!
「や、やぁ、二人とも……!」
「急に押しかけて申し訳ありません。って……何やら凄く汗をかかれているようですが……」
「本当だ。熱中症……? ちゃんと水を飲まないとダメだよ?」
どちらかというと冷や汗の方が正しい。さっきまで追い詰められいたから。
「というか、よく家が分かったね」
「それくらい冬瀬家にかかればすぐに分かりますよ」
と、自慢げに胸を張るみぞれさん。
個人情報がただ漏れじゃないか……。
しかし、このままでは非常にマズイ。家には姉さんに加奈に楓音ちゃんと汐音ちゃんと、今、誰が俺とデートするか揉めている。
そんな時に、みぞれさんや陽茉利さんが現れたとなったら、また別のことで揉めそう……。
「と、とりあえず2人とも、一回外に出ない?」
「外にですか。私は別に構いませんよ」
「私も大丈夫」
女の子を暑い外に出すのは申し訳ないが、2人をみんなに接触させないためにも——
「あー! トーくんが女の子連れてきたー!」
「本当だ本当だぁ〜! トーくんが女の子を連れてきたぁ〜」
「っ……!?」
後ろから、声がする。
振り向くと、楓音ちゃんと汐音ちゃんが物珍しそうに2人を見ていた。
……見つかってしまったか。
2人の声にドタバタと足音が近づく。
「お兄ちゃんが女の子!?」
「誰よ……って、ああみぞれさんと陽茉利さん」
「真依先輩、こんにちは。隣の方は妹の加奈さんで、そちらのお2人は従姉妹の楓音さんと汐音さんですね。初めてまして。わたくし、隼人さんの同じクラスで委員長を務めております、冬瀬みぞれです。以後お見知りおきを」
「み、みぞれちゃんそこまで知ってるの……!? あ、初めまして。隼人くんとは別のクラスだけど仲良くさせていただいている朝倉陽茉利です……!」
みぞれさんは落ち着いた様子で、調べて知ったのであろうみんなの名前を言う。
冬瀬家、恐るべし……。
陽茉利さんはオドオドとしながら挨拶をしていた。
そんなに緊張しなくてもいいのに……。
「2人が来たということは……バイトの件が関係しているのかな?」
「流石、真依先輩。勘が鋭いですね。そうです。隼人さんだけではバイトの件は説得できないかなと思いまして……陽茉利さんと加勢に来ました♪」
「突然、お邪魔してすいません……!」
「あー水着ファミレスのことね。その件はまぁ……許したよ」
「まぁ、許されたのですか……! 隼人さん凄いですね!」
「あはは……でもまた新たな問題が発生したんだよ」
「新たな問題? 」
「お兄ちゃんが誰とデートするかです」
その後、みぞれさんと陽茉利さんに家に上がってもらい、デートの流れになるまでの経緯を話した。
「デートですか……。是非とも私もしたいですね」
「わ、私も隼人くんとででデート……したい……!」
でも逆に参加者が増えただけであった。
また逆戻りで、言い争いが起こるかと思っていた時だった。
みぞれさんがパンッと手を叩き、
「夏休みは一ヶ月以上ありますし……ここにいる皆さんが隼人さんと一日デートすればよろしいのでは?」
満面の笑みでそう言った。
「なるほど……! 単純なことに気づかなかたわ」
「それならみんな平等だね」
「トーくんとデート! カノ、楽しみ〜!」
「シノもトーくんとのデート楽しみ〜」
「私も久々に心が踊ります」
「う、嬉しいけど……隼人くんはそれでいいの?」
「ま、まぁ……俺はみんながいいならいいよ」
それに、こんな美少女たちとデートできるなんて、滅多にないだろう。
ここにいる女の子たちはみんな安心だし、純粋に楽しめそうだ。
ワイワイと盛り上がるみんなを見てふと思う。
……水着ファミレスより、デートの方が重要だったんだなぁ。
貞操観念逆転世界〜俺は引きこもりの学生に転生したようだが? 悠/陽波ゆうい @yuberu123
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