第28話 ひょっとして俺は、モテモテなの……か?

「お姉ちゃん! どうしてそうなっちゃうの!」


 バンッと、加奈が机を叩く。


「だって隼人は優しいしカッコいいからみんなが好きになっちゃうと思うの。ならもう、遠慮する必要はないかなーと」


「む、姉妹で考え方が同じ……。じゃあ私もお兄ちゃんとデートする!」


「真依ちゃんも加奈ちゃんもデートするなら」


「シノとカノもデートする〜」


「え、ちょっ……みんな!?」


 バイトの事より俺とデートする事で話が盛り上がり始めてしまった。


 女の子たちが、俺とのデートを巡ってこんなにも争って……。


 ……ひょっとして俺はモテるのか?


 前世では可愛い幼馴染と無駄にイケメンな親友が傍にいて、楽しく毎日を過ごしていたが、告白はされた事はなかった。

 というか、俺と幼馴染が付き合ってると勘違いしている奴が多かった気がする。


 つむぎれんも元気してるかな……。また会えたら遊びにいきたいなぁ……。


「お兄ちゃん!」


「は、はい!!」


 加奈に大きな声で呼ばれ変な声が出てしまった。


「お兄ちゃんは誰とデートしたいの?」


「えっ、誰と……?」


「そう、この中の一人。私とお姉ちゃんと楓音と汐音の誰とデートしたい?」


 目を離している隙になんか1人に絞れとかの話になってる!?


「隼人、お姉ちゃんだよね? 最初に提案したもんね」


「お兄ちゃん、私だよね? 私ならお兄ちゃんの事守れるし」


「カノ、トーくんとデートしたいー! 2人っきりでお出かけしたーい!」


「シノもシノも〜。トーくんとデートした〜い。なんなら、カノと3人でもいいよ〜」

 

 4人が俺に迫ってくる。

 後ろに下がっていると、壁にぶつかった。

 に、逃げられない……!!


「お、俺は……」


 ここで決めるしかないのか。

 4人は俺の次の言葉を固唾を飲んで待っている。


「俺は……俺がデートしたいのは……」


 ピンポーン


 家のチャイムが鳴った。

 ナイスタイミング!


「お、俺出てくるね……!」


「あっ、ちょっと……!」


 急いで玄関に向かう。

 誰が来たか分からないが、た、助かった……。

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