第26話 いよいよ夏が来そうですが?

 学校の校門のところでいくつかの行列が出来ている。

 先頭には姫与会長と副会長のねぇさん。そして見覚えがない女の子がちらほら。中でも腕に腕章をつけている2人は生徒メンバーなのだろう。

 1人はふわふわとしたミルキーブラウンのセミロングの髪に、ピンクの瞳の美少女。

 もう1人は薄紫のハーフアップに茜色の可愛い子だ。


 眺めていると、俺の肩にポンと誰かが手を置いてきた。


「あれは容儀検査と持ち物検査だな。夏休み前だからやるんだよ」


「そうなのか。おはよう颯太」


「おう、おはよう。まぁ俺たち男は若干緩い部分もあるが」


 検査しているのは生徒会と補助の生徒が数名。生徒会の方は厳しそうだ。


 俺と颯太は2年生の列に並びに行く。


「わぁ、隼人様と颯太様だぁ〜」

「2人とも最近仲がいいよね〜」

 

 俺たちが並んだことで、周囲がざわついた。この反応にも徐々に慣れつつある。


「あ、隼人っ! 無事に来れたのね! 怪我はない? 誰かに襲われたりしてない!」


 俺に気づいた姉さんが慌てたようにそう言うからさらに目立つ。


「ね、姉さん落ち着いて……! 俺は大丈夫だから」


 日に日に姉さんが過保護になっていく気がする……。


 俺の番が回ってきて、さっき見た薄紫髪の女の子が検査の担当だ。リボンの色を見る限り、俺たちと同じ2年。


 鞄を机に置き、中をチェックされた後、容儀検査。


「貴方は第一ボタンを外す癖があるとよく聞きますので、気をつけてください」


「は、はい……」


 凛とした声で注意される。

 元の世界では開けていても誰も気にしなかったんだよなぁ。


「ん? どしたの?」


 検査は終わったはずなのに、ジーと見つめられる。


「いえ、何も……」


「そっか」


 ほんのり頬が赤かったのは気のせいなのだろう。



 体育館にて、夏休み前最後の全校集会が行われている。


「明日から夏休みに入りますが、気を抜かないよう、皆さんお願いします」


 女性の校長先生の短いスピードが終わる。

 こんな暑い体育館で立って長々と話を聞くのは辛いからありがたい。


 次に壇上は上がったのは生徒会長。


「皆さん、こんにちは。生徒会長の神宮寺姫与です」


 淡々と話を進めていく会長。

 終わりが近づいてきたと思ったら、


「そして、最後に我々生徒会からお知らせです。夏休み明けから我が生徒会長に2年生の鳴海隼人くんがお試しで加入します。目安箱を設置しておくので、要望があれば入れてくださいね」


 会長がそう言うと、体育館内が騒がしくなった。


「えーっ! 鳴海くんが!」

「鳴海くんが入ったなら、私頑張ろうかなー!」


生徒会の仕事内容はまだ説明されていないので、周りが騒いでいる理由が全然分からない。


 俺は結局、生徒会の件をお試しという形でまずは夏休み明けてから受けることにした。


 さて、明日からは夏休み。貞操逆転の夏はどんなものか。


 俺はまた知らない夏に胸を躍らせた——。

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