お人形遊び1

 朝。エレナの部屋で脱ぎ散らかしてしまった服を片付ける。床に散らばった下着を拾いながら、昨夜の激しさに思いを馳せた。


「うう……」


 恥ずかしさと共に、快楽や多幸感が込み上げた。散々いいようにされたが、不思議と悪い気はしない。

 それどころか、心のどこかで今日もできるのではないかと期待してしまっている自分もいた。


「あれ?」


 ふと、ベッドの下に何やら見覚えのない箱があった。好奇心に駆られて中を覗くと、おおよそエレナに似つかわしくないものが入っていた。


「人形……?」


 手に取ってみると、クセっ気のある髪が指に絡みついた。着ている服も自分のものによく似ていて、幼さを残した顔立ちもどこか見覚えのあるものだった。


「僕の、人形……?」


 端的にテルミットの特長を捉えたそれは、見れば見るほど、自分に思えてならない。


 それにしても、なぜこんなものがあるのだろうか。


 思考をめぐらせと、ある一つの答えにたどり着いた。


 この人形は、エレナが自慰に使用するためのものではないだろうか。


「…………」


 一度その結論にたどり着いてしまうと、どうしてもそれが答えに思えてならない。


 悪いと思ってはいても、つい鼻を当ててニオイを嗅いでしまう。


 テルミットのニオイはしない。代わりに、何とも言えない甘ったるいニオイがした。


「……エレナさんのニオイがする」


「何しているんだい?」


「うわっ! え、エレナさん!」


 突然声をかけられ、思わず落としそうになってしまう。


「い、いつからそこに居たんですか!」


「テルがボクの人形を見つけたあたりから」


「そ、それじゃあ……」


「ニオイを嗅ぐところも、バッチリ見たよ」


 テルミットはその場に小さくなった。穴があったら入ってしまいたい。


 話を反らせるように人形を見せた。


「これ、僕の人形ですよね? どうしてエレナさんが持って……いや、この人形で何をしてたんですか?」


 反撃を試みるテルミットに、涼しい顔で答える。


「テルが町に行くと聞いて、少し寂しくなってね。テルがいない間、これで寂しさを紛らわせていたんだ」


「そうだったんですか」


 テルミットが街へ行きたいと言い出した手前、強く出られない。


 逆の立場であれば、自分も寂しいと思うだろうし、そうなると人形が欲しくなるのかもしれない。


 頭の中で、エレナの人形を思い浮かべる。……少し欲しいかもしれない。


「今は本物のテルがいるから、お世話になっていないけどね」


 エレナがにこりと微笑んだ。ふと、テルミットが物欲しそうな目をしていることに気づいた。


「良かったら、テルの分も作ってあげようか?」


「いいんですか?」


「お安い御用さ」


 ぽん、とエレナが薄い胸を叩いた。

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