秘密の花園
この日は珍しく、屋外の日中にお茶会を開いていた。エレナと出会った庭園。季節の花が咲き乱れ、鮮やかに彩る。
パラソルを広げたおかげで、直射日光の心配をすることなく、紅茶に舌鼓をうつことができた。テーブルを挟んでエレナと向かい合う。
テーブルの上には、エレナの作ってくれたクッキーと紅茶が並べられていた。
エレナがカップに口をつけ、幸せそうに微笑んだ。
「うん、やっぱり外で飲む紅茶は格別だね」
「そうですね」
「おや、そこはボクと飲むから美味しいって言ってくれないのかい?」
ニヤリと尋ねるエレナ。
「も、もちろん、エレナさんと飲む紅茶は最高ですよ!」
「良かった。ボクも同じ気持ちだよ」
にこりとエレナが微笑んだ。
ふと、テルミットの視界の端で、何かが動いた。
「ん?」
空中を舞う点。目を凝らすと、ハチのようだ。花の香りに誘われて来たのだろうか。
追い払うべく手を振ると、逃げ場を求めて宙をさ迷う。やがてそれは、テルミットが最も近づいて欲しくないところへと接近する。
「あっ!」
あろうことか、ハチがエレナのスカートの中に吸い込まれていった。
「どうかしたのかい?」
何も知らない様子でエレナが尋ねる。
「今、ハチが飛んできて、エレナさんのスカートの中に入ってしまって、その……」
エレナに危険が迫っている今、一刻も早く取り除いてあげたい。だが、流石にスカートの中を見せてください、とは言えない。
こんな時、いったい何と頼めばいいのか。逡巡していると、テルミットの言わんとしていることに気づいたのか、エレナが頬を染めた。
スカート端をちょこんと摘むと、大胆に開いて見せる。
そこは、まさに“秘密の花園”だった。
膝まで伸びたスカートはエレナの胸まで持ち上げられ、平坦な身体に押しつけられた。
タイツを纏った華奢な脚が、スカートの裏地の白さと相まって強調される。もじもじと動かす足の上には、タイツに覆われながらも、その奥のショーツが透けていた。
見たら悪いと思っていても、その白さが。レースが。可憐さが網膜に焼きつく。タイツの最上部を隠すように揺れるブラウスの裾が、余計にショーツを強調させる。
「テル……。は、恥ずかしいから、早めに済ませてね……?」
羞恥に頬を染めるエレナが、なんとも新鮮で可愛らしい。
「…………」
わかりました、と即答できなかった。テルミットは目の前の“秘密の花園”に、心を奪われてしまっていたからだ。
出来ることなら、一分一秒でも長く、この光景を目に焼きつけたい。
それでも、恥ずかしい思いを堪えてスカートの奥を晒してくれるエレナに応えたい。
覚悟を決め、タイツ越しにショーツと向き合う。
「ぁ……」
エレナからくぐもった声が漏れた。
「ご、ごめん。息があたると、その、くすぐったくて……」
「す、すみません」
なるべく激しい息をしないように意識する。だが、意識をすればするほど、エレナのスカートの中で吸う空気が香ばしく、芳醇に感じられる。空気だけで酔っ払ってしまいそうだ。
至近距離からエレナの脚を観察するも、ハチの姿は見当たらない。
「どこへ行ったんだろう……」
どこかへ飛んで行ってくれたのだと思いたいが、それで万が一エレナが刺されるようなことがあってはならない。
表側にいないということは、裏側にいるのだろうか。
裏側。お尻の方を覗き込むと──いた。小ぶりで柔らかさそうなお尻の上を、不埒者が、我が物顔で占領していた。
羨ましい。……いや、憎たらしい。
ハチを刺激しないように、慎重に指を近づける。危険を察知したのか、ハチが逃げるようにエレナの太ももを駆け回った。
慎重に、音もなく追跡する。
「ひゃん……!」
いつの間にか息が荒くなってしまっていたのか、エレナから声が漏れた。よほどくすぐったかったのか、捲り上げていたはずのスカートが押し付けられる。
スカートの裏地に押され、タイツ越しにエレナの秘部へ顔を押し付けられた。エレナの体温が温かい。
すぐ目の前には、タイツから透ける可愛らしいショーツがあり、その奥には女の子の象徴であり、子孫を残すための神聖な場所が薄い布越しに温度を感じさせてテルミットの理性をドロドロに溶かして──
「…………」
荒くなってしまいそうな呼吸を無理矢理止める。全身が息をしろと叫ぶが、これ以上エレナに刺激を与えるのは気が引けた。
やがて、エレナも落ち着いたのか、再び視界が明るくなった。
「ご、ごめん。くすぐったくて……」
「いえ、こちらこそ、すみません」
エレナがスカートを上げたおかげで、動きやすくなった。
テルミットの目の前には、ちょうどハチがおり、挑発的にもテルミットを見上げていた。
コイツのおかげで、いい思いができ──とんだ災難だ。
恨みを押し殺し、そっと指を伸ばす。ハチを摘むと、報復とばかりに指先に針が突き立てられた。
「っ!」
指先に激痛が走る。
声を我慢して、そのままエレナのタイツから引き剥がすと、遠くへ投げた。戻ってくる気配はない。ふぅ、と一息。
「もう大丈夫ですよ」
「ケガはないかい? 刺されたりしなかったかい?」
「平気ですよ。ほら!」
テルミットが左手を広げて見せると、エレナが頬を膨らませた。
「騙されないよ。ハチを摘んでいたのは、逆の手だったはずだよ」
エレナがテルミットの右手を掴むと、まじまじと観察した。
「ほら、やっぱり刺されているじゃないか」
「す、すみません。エレナさんに心配をかけたくなくて……」
「心配くらいさせておくれよ。テルのことが大切なんだから」
「エレナさん……」
じわりと胸の奥に温かさが広がる。だらしなく頬が緩みそうになる。
「待ってて。今、毒を抜くから」
その場に膝をつくと、テルミットの刺された手を大事そうに両手で抱え、人差し指を口に含む。
小さな舌が、指先を這い回る。傷口を見つけると、ちゅうちゅうと吸い始めた。
好きな女性を跪かせ、奉仕をさせるように指を口に含ませている。その献身的な光景に、ぞくりと脳髄が震える。何もやましいことはないというのに背徳的な気分になり、それがクセになってしまいそうな自分がいた。
そんなテルミットの様子を知ってか知らずか、エレナの奉仕は続く。
ちゅぽん。と口を離すと、慈愛の篭った手が、そっとテルミットの手を撫でた。
「腫れてる……。痛くないかい?」
「だ、大丈夫です。それより……」
赤く腫れた指先が、エレナの唾液でぬらぬら輝いている。
自分の指が、こんなにも美味しそうだと思う日が来るとは、思いもしなかった。
無意識に口へ運びそうになるも、エレナに奪われ再び口の中で舌が絡みつく。指と舌の交尾。
ちゅぱ。ちゅぱ。
エレナがテルミットの指を咥えたまま、上目遣いに首を傾げた。それだけで、理性が溶けそうになる。
そんなテルミットの内心を知ってか知らずか、さらに激しく指を吸われる。
激しい愛撫に、身体の一部に血液が集まっていく。
限界も近くなったところで、ようやく開放された。
「うん、腫れも大分引いてきたね。あとは冷やしておけば、良くなるよ」
「……ありがとうございます」
テルミットがホッと息をついた。このまま続けば、ズボンの中で粗相をして、またみっともないところを見られてしまうところだった。ここまで堪えた自分はえらい。誇らしい。
「それじゃあ、今度はこちらの腫れも鎮めようか」
テルミットのズボンの中で膨らむそれをオモチャのように指で弾くと、エレナがニヤリと微笑んだ。
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