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それが、キバのラセックス国王との交渉の全てだった。
ほぼ全ては、キバの思惑通りに運び、ラセックス軍の力を借りることが決まったのだ。
だが、一つだけ予想外のことがあった。
ノースアングルとの戦いを終えたラセックス三万の軍の帰国が、予定より遅れたのだ。
全速力でアルザスまで駆けつけても、ドラゴニアの兵が塩湖を奪う頃に到着するかは不明だった。
それゆえ、ラセックス軍到着までは、キバたちは塩湖を死守する必要があった。
それが一時間になるか、1日になるか、あるいは三日になるか。
わからなかったのだ。
もし一日以上となれば、アルザス軍はドラゴニアの兵を前に敗走するしかなかった。
だが、なんとかギリギリ間に合った。
「ドラゴニアの兵よ! 見ての通り、ラセックスの兵は、総勢三万! 貴様らの三倍だ!」
ルイーズがドラゴニアの兵士たちに、事実を突きつける。
平原での戦い。兵力の差はそのまま勝敗に直結する。
ドラゴニアが最強の国家であっても、兵士が三倍の力を発揮できるわけがない。
ドラゴニアの強さは、兵士の多さに担保されているだけで、局地的に兵力が足りないのであればどうしようもないのだ。
「我々も無益な殺しは好まない。このまま引き返すのであれば、我々は攻撃しない。だが、戦うというのであれば――一人残らず、この平原に首を晒すことになるぞ!」
その言葉を聞いて、クルードは歯ぎしりをしながら、ルイーズを睨みつけた。
だがどれだけ威勢良く振る舞ったところで、状況は変わらない。
一万の兵士で三万の兵士を倒すことはできない。
「く、ひきあげるぞ!」
クルードは、部下たちにそう命令した。
そして振り返りざまにキバを睨みつけて捨て台詞を残す。
「無能軍師め、覚えてろよ!」
ドラゴニアの将軍の遠吠えは、虚しく平原に拡散した。
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