4-8
「ば、バカな!?」
リッテル辺境伯軍の右翼。その端は――地獄と化していた。
お互いに横長に布陣して相対していたはずのアルザス軍が、いつの間にかリッテル辺境伯軍の右翼の側面に横陣のままで現れて、集中砲火を浴びせてきたのだ。
今空から両軍を見れば、T字のようになっているだろう。上編がリッテル軍、縦線が辺境伯軍である。
こうなると、リッテル軍は横面全体を使って、リッテル辺境伯の端に火力を集中させることができる。
ドミノ倒しのように、なすすべなく辺境伯の兵士が倒れていく。
反撃しようにも、自軍がアルザス軍に向かっては縦長になっているので、前の兵士が邪魔になり、魔法が使えないのだ。
横陣に布陣すると、側面に敵が現れた時に絶望的な不利を生む。
だが、普通はそんなことはない。
なぜなら敵が横陣に布陣しているからこそ、自軍も横陣に布陣するからである。
実際、アルザス軍も最初は横陣で布陣していた。
「ありえない! こんなに早く、回り込まれるなんて!?」
だが、気付いた時には、魔法のように側面にいたのだ。
「こんなはずが……」
辺境伯軍の将軍は目の前の現実が理解できなかった。
確かに丘陵や林のせいで視界が悪かった。しかし、それにしても、先ほどまでは横隊列で布陣していたはずなのだ。それがこんなに早く回り込まれるなんて。
「左翼に知らせろ! 兵士を早くよこせと!」
殺到を受けている辺境伯軍は、なんとか立て直そうとするが、いきなり横陣を九十度回転させることはできない。
だからなすすべなく、まるでドミノのように倒されていくしかなかった。
「いったいどうなっているんだ!?」
――だが、その答えをリッテルの将軍が知ることはなかった。
アルザスの猛攻に、首を飛ばされからだ――
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