2-2

 独立国で、大陸の塩の供給を担うランジーが、七王国のジュートに攻め込まれた。


 それが意味するのは――


「……ジュートは滅びるかも知れませんね」


 七王国がしのぎを削るこの時代。

 だが、ジュートが暗黙の了解を破った。

 塩の供給を独占されれば、内陸の国々は、存亡の危機だ。


「塩が高く売れるじゃないか!」


 役人の一人が嬉しそうに言った。

 

 なんとも安直な考えだった。


 塩の一大供給源だったランジーが、ジュートに握られれば、他の七王国は、別の塩の供給元を探さなければいけない。


 そうなれば、ジュートの次に塩が採れるアルザスに白羽の矢が立つ。

 塩を輸出して、がっぽがっぽ儲けられる……

 

 なんて、都合のいいことがあるわけがない。


「……王女様、これはまずいことになりましたね」


 キバが言う。


「どういうことですか」


「塩をめぐるジュートと他の七王国の全面対決は避けられないでしょう。しかし、当面塩を確保するために、ジュートと戦うよりも、もっと手早い方法があります」


「……まさか」


「ランジーから塩が買えないのならばアルザスから購入すれば、なんて他の七王国が思うわけがありません。――アルザスを自国の領土にしてしまえば、それで解決なのですから」


 同じ塩を手に入れるという目的のために、

 七王国の一角であるジュートと全面対決をするか。

 それとも、全兵力を合わせても1000人にも満たない小国アルザスを捻り潰すか。


 どちらが容易いかは、子供でもわかることだ。


「……キバさんならば、七王国を相手にしても、勝てますか?」


 王女はキバにそう尋ねる。


 答えは決まりきっている。


「残念ながら……勝てるわけがありません」


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