4-3
「ジュート軍は総勢三万。でも、まだ三万が集結しているわけではないはずなんです」
キバは、大陸の地図を指差す。
「ジュートとアルザスの間には、山脈があります。すなわち、もしジュート内で三万の兵士を集結した場合、その大部隊で山脈を超えるか、大幅に遠回りする必要があります。おそらくどちらも現実的ではありません」
「なるほど、確かに……」
「各地方で軍隊を作ったとしても、それらをジュート国内で集結させるの現実的ではない。となると、彼らはそれぞれの地方から、アルザスへ直接向かい、現地で集結するはずなのです」
「なるほど。それなら各個撃破できると、そう言うわけですね」
キバは頷いたあと、伝令に聞く。
「ジュートはどこから兵士を集める?」
すると、伝令は四つの地名を言った。
アルザスに近いものから順番に、次の4部隊に別れていることがわかった。
リッテル辺境伯領 10,000
ロイド男爵領 10,000
リール伯爵領 5,000
王都軍 5,000
「これらが合流する前に、各個撃破すれば、相手にする軍勢は最大で2倍になります。もちろん倍の敵と戦うのは決して簡単なことではありませんが、敵が遠征を仕掛けてくるので疲弊しているであろうこと、こちらが地形を完璧に把握していることを加味すれば、なんとかならないこともない」
「なるほど……」
アルバートは、半分だけ納得する。
確かに当初聞いていた六倍の相手と戦うのに比べれば容易いかもしれない。だがそれでも倍の敵を相手にすることは、やはりゾッとすることだ。
それに、上手く各個撃破できたとしても、長期的には三万の兵士と戦うことに変わりはない。
……アルバートはそう思ったが、キバの考えは違った。
「敵は圧倒的な数の優位で戦うことを目的としているはず。ですから、リッテル辺境伯とロイド男爵の2万の軍を撃破できれば、その前提を崩すことができます。残りの各個五千の部隊は、きっと矛を収めるk遠でしょう」
「つまり我々は、5千の兵力で、“1万の敵を二回倒せばいい”と言うわけでねすね」
「そう言うことになります」
キバは、もちろんそれが簡単なことではないのは重々承知していたが、しかし不可能ではないと思っていた。
何故ならば、今アルザス軍には、ベッテルハイム将軍の軍団がいる体。
彼らは常に多勢を相手にして何年も戦い抜いてきた屈強な戦士たちだ。
「……アルザスに来ていただいて、たった1ヶ月で戦に駆り出してしまい申し訳ありませんが、この戦いにはベッテルハイム大将の力が必要です。どうかよろしくお願いします」
キバが頭を下げる。
ベッテルハイムは毅然と頷く。
「我々は常に戦いに生きてきた。国を失ったのだ。今更安住がすぐに訪れるなどとは思うまい。この戦い、祖国を立て直す、長い戦いの一つと捉えよう」
力強い言葉に、アルバートも少し安心する。
「――それでは急ぎましょうか。敵より早く動かねば」
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