2-6


 アルザス、ライル塩湖の西方にあるライル平原。


 そこで急遽集められたアルザスの全軍が布陣していた。

 その数は1000。

 国の一大事に、大人だけでなく、十代の未成年まで集めて編成されたまさしく国の全兵力だった。


 その先頭で、将軍アルバートは焦りの表情を浮かべていた。


 全兵力と言っても、ドラゴニアの一万の軍隊が現れれば、ひとたまりもない。

 何もせずに殺されるわけにはいかないからと兵を集めたが、戦いになれば全員死ぬことになる。


 唯一の希望は、ラセックスに交渉しにいったキバだけだ。


「敵は、既にライル平原の西端部まできております」


 伝令が将軍にそう伝えた。

 将軍は身震いする。


「――将軍!」


 と、アルザスの陣に馬に乗ったキバがやってきた。


「おお! キバ様!」


 兵士から歓声が上がった。

 先のルイーズたちとの戦いでアルザスを圧勝に導いたキバは、すでに兵士たちの間で神格化されていた。

 だが、その顔は暗い。


「どうしたのですか、キバ様? ラセックスの援軍は?」


 将軍が聞くと、キバは首を横に振った。


「とにかく戦いの準備です。ドラゴニアの動きは予想以上に速いです。やれるだけのことをやりましょう」


 軍師はそう語りかけた。

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