第41話 普段まともじゃない奴がまともな言動は映画版ジャイアン(ry

 マユラ、メルト、ルルが全く関係していない話をしている一方で、ようやく目を覚ましたユノは半寝ぼけの眼で周囲を見渡した。


 すると、前回の自分の記憶がある場所とは全く違う場所にいて困惑したが、すぐに他のメンバーを見つけて心を落ち着かせると現状を尋ねた。


「あのー、現在ってどういう状況ですか? なんか飲まされてから記憶が抜けてるんですが」


「あー、今はねかくかくしかじかって感じだね」


「なるほど、まるまるうまうまって感じですか」


 マユラの説明に「うんうん」と理解したようにうなづくユノ。しかし、その光景を見てルルは思わず首をかしげる。


「二人は何を言ってるのでしょう」


「ほら、一から説明するのが面倒だからありていな説明しましたよっていうシチュエーションをしてるだけ。実際、何も伝わってないから」


「じゃあ、お二人方の行動って......」


「無意味」


「あ、はい.......」


「やるならこれでいいのよ」


 説明中......


「なるほど、そういうことだったんですね。なら、今こそ私達の出番ではあーりませんか!」


「しれっと、さっきのことなかったように始めるのやめてくれる? といっても、まさかゼンに繋がりがあるというのはこっちにとっては幸運といっていい。さっさとくっつけて、あいつらの“ざまぁ”が見たい」


「なんか趣旨が変わってるような気がするけど、まあ結果が一緒だから問題ないか」


「となれば、どうすれば効率よくざまぁ出来るかですよね。一番イラッとするのは仲良くしてるところを見せつけることですね」


「まあ、女って実際猫被ってるだけで、男よりも数倍肉食だしね。一番強いのはさっさとこさえることだね」


「それだー! やっぱり好きな人ととの命の決勝は何よりも強力な証拠であり、一撃であるからね。それじゃあ、とりあえず惚れ薬でも飲ませよっか」


「なら、そのタイミングはいつにしますか? とりあえず、見ている様子だとゼンさんが誘えば100パーセント来るでしょうから、そのタイミングでお酒でに混ぜるとか。

 ほら、お酒で思考力が鈍ったところで惚れ薬の効果で落とす作戦です。マユラさんの惚れ薬の効果度合いにもよりますが、取り合えず二人で夜の街へ向かうようになれば勝ち確ですよ」


「それじゃあ、実行犯は私がやる。仕事でもそういうことやったことあるし。毒を盛るのも、惚れ薬を盛るのも同じこと」


「ならば、私は惚れ薬の開発かな~。ゼン様が状態異常に全くならないから頓挫してた計画なんだけど、機材は残ってるし、作ろうと思えば数日で惚れ薬を飲ませた相手をどんな聖人君子でも性欲魔人に変えられるほどの効果的なものを作れるよ~」


「それじゃあ、決まりですね。作戦名は『女のざまぁは怖いんだぞ大作戦』で」


「「おおー!」」


「ちょ、ちょっと待ってくださいいいいいい!」


 勝手に脱線し、勝手に盛り上がり、勝手に決めてしまったマユラ、ユノ、メルトの三人にして会話に流されっぱなしだったルルがようやく声を振り絞った。


「ど、どうしてそうなるんですか!?」


「え、だってルルさん仕返ししたくないですか? かといって、暴力では相手と同じ土俵ですし、やるならこれぐらいやらないと」


「それにあなたはあのイケメンに惚れてるはず。だったら、何の問題もない」


「加えて、幸せの形を生み出せるとなればもはや一回の魔法で何百体の鳥を仕留めたのと一緒だよ」


「え、真顔でなにさも当然のように言ってるんですか? こ、これって私が間違ってるんですか?」


 三人の「え、今更何言ってるの?」という視線にルルは激しく動揺しながらも、それでもその考えに乗ることは出来なかった。

 それは全面的にこちらの都合しか押し付けていないから。


「ともかく! 相手のことを全然考えないのはよくないです! 確かに、全くありえないという気持ちじゃありませんが、それでも相手の気持ちを無視した作戦を立てるのはよくないです。

 それじゃあ、やり方は違えど、ラックさんをまるで自分のステータスのように考えてるあの3人と同じだと思うんです」


「「「......」」」


 ルルの熱のこもった言葉に3人は思わずハッと我に返る。まるで邪な心が浄化されていくみたいに。

 そして、3人はカッコつけた顔ぶりで告げた。


「「「その言葉を待っていた」」」


「え、なんでそんなまるで試してたみたいな顔ぶりで言えるんですか? 完全に過激派思想だったのに」


 ルルは「この人達は根本的な部分でダメなんじゃなかろうか」と思い始めてきた。

 するとその時、背後から肩を叩かれた。それにビクッとしながらもルルは振り返るとそこには禅がいて、後ろにいるラックを指さしながらあることを提案してきた。


「実はあいつな、これから簡単な討伐クエストに行くみてぇなんだ。それで俺が誘われたんだが、俺の代わりにルルが行って来たらどうだ?」


「わ、私がですか!? で、でも、足でまといになったら......」


 そう言うルルに禅はそっと耳打ちする。


(まあ、何も考えずに行ってこい。男ってのは単純で、一緒に共闘できれば有能であると評価するし、足手まといになってもそれはそれでか弱さをアピールできるってもんだ。

 それにやっぱり一番印象に残るのは頑張ってる姿だ。自分のことを好いてくれる女が自分のために努力するってんだ。何も響かないはずがない。気張らずにいけ。少し離れたところで見ててやるからよ)


 禅はそう言い終わるとサムズアップする。

 その時ルルは禅という男の評価を改めた。「あれ? 実は一番まともなんじゃないか?」と。

 そして、その耳打ちが聞こえる範囲にいたメルト、マユラ、ユノの三人も「あれ? なんかすごいまともなこと言ってる」と思わず目を疑った。

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