第30話 ドロドロにドキハラするタイプなんです
「さあ、元気よく参りましょう。続いての勝負は知力勝負~。これから、私が問題を出しますので、素早くお手元の魔道具に触れてください。もちろん、問題には平等にいろんな問題を出そうと思っていますから悪しからず」
「やっぱりユノの欲が終わらないとこの企画自体も終わらないのね」
「まあ、もう1種目やっちゃったし、どうせなら楽しんでいこう~」
「知力はあまり自信ないです......」
「まあ、そんな気負いせずにやってください。とはいえ、ここでの勝負での優勝候補で言えばやはり魔女であるマユラさんですかね。次にデータを扱っているメルトさんと言ったぐらいでしょうか。ルルさんには二人に離されないように頑張って欲しいところです」
ユノの欲のままにわがままに企画は第2フェーズへと移行した。
もっとも、そう意識しているのはユノだけであって、他3人は全く別のことをやらされてると思っているが。
「それでは参りましょう。第1問、マレクナ火山に住むマグマに入っても溶けることのない特殊な赤いウロコを纏った体長――――――」
その瞬間、マユラの魔道具がピンポーンと勢いよく鳴る。
「コアルサラマンダー」
「正解です! さすがマユラさん、問題を最後まで聞かずとも答えてしまうとは素晴らしいです」
「得意分野だからね」
「まだ1問目なので他の二人は気負いせず。それでは第2問目、我らがパーティメンバーであるゼンさん―――――」
またまたマユラの魔道具が軽快に音を立てた。
「星マークの入ったトランクス!」
「おーっと、もはや問題の概要も見えていないのに答えたー! そして、せいかーい! 凄いというか、怖い! さっきのサラマンダーの問題より明らに問題レベル跳ね上がってるのにサラッと答えました!」
「ゼン様の問題だからね」
「それはもはや理由と言えるのでしょうか。それにしても、この問題を堪えられなかったメルトさんは痛かったですね。ストーカーというアイデンティティがなくなってしまいます」
「そんな個性はくそくらえ」
「思わぬ暴言が飛んできたのでさっさと次に参りましょう。第3問め、次に私が言う会話で空欄に入る言葉を答えてください」
そう言ってユノはゴホンと一回咳払いすると一人二役を演じ始めた。
「『待ってくれ! 誤解なんだ! 俺は本当に何もしていない! 信じてくれ!』」
「『嘘よ! だって、あんなにも楽しそうに歩いてたじゃない! 私とも行ったことのないオシャレな店で笑って......あんな笑顔最近じゃ全く見せてくれたことなかったのに』」
「こ、これってどういうシチュエーションなんですか?」
「男女の痴情のもつれってやつじゃないかな」
「なら、それの感覚がわからない私には分が悪い」
「『それは......仕方ないじゃないか! あっちが無理に誘ってきたんだ! あの子には借りがあったし、食事ぐらいならと思って......笑っていたのは愛想笑いだ! ただ雰囲気に任せて相手が悪い気分にならないようにしていただけだ!』」
「へぇ~、それじゃあ借りがあるだったら二人で人気の少ない建物でシケこもうとしても許されるわけなんだ。へぇ~、そうなんだ」
「あ、これ地雷踏んだね」
「男の方にもクズのニオイがする。あの男とベクトルは違うけど。ともあれ、あの男の方がまだマシか」
「な、なんか、問題答えるよりもこの後の展開の方が気になるんですが」
「『そ、それは......誰かとの見間違いじゃないか? ほら、俺の背丈ってそんなに高くないし、服だってスーツだったから似たようなのが多いし』」
「『そうだね、似たようなのが多いよね。確かに、見間違いかも』」
「『そ、そうだろ? な? はい、この問題はこれで解決! 早く飯にしよう。せっかく作ってくれた飯が冷めちゃうからな』」
「『そう、だね。うん、そうだ。これが最後の晩餐になるし、最後ぐらいは美味しく食べたいよね』」
「あ、これ旦那が食卓に着いたその後ろに刃物持って後ろに立ってる状況が想像できます」
「ドロドロだね」
「というか、問題はよ」
「『さ、最後の晩餐ってどういうこと?』」
「『私ね、知ってるんだ~。その見間違えたって男性のネクタイに私があげたはずのネクタイをしていたことを』」
「『!?―――――いや、でもそれぐらい―――――』」
「『一緒な人がいるわけないじゃん! 背丈もスーツもネクタイも一緒な男性なんて、それをたまたま見かけるなんてそんなことあるわけないじゃん! ネクタイだけじゃない! カバンも靴もすぐに同じものだって理解した!......ねぇ、そんなにあんな女と一緒がいいの? あんな女が好きなの? 私じゃ何がダメだったの? 私とあの女じゃ何が違うの? ねぇ、教えてよ。ねぇ、ねぇ! 何がいけなかったの!? 私は何を見させられたの!?』」
「ヒステリックモードに入っちゃったね。これはもうそう簡単に収集尽かないよ」
「もうこれってなんでしたっけ?」
「長い、長い長い長い。何を見させられてるのは結構こっちのセリフ。一人芝居に、というかこの問題に何分かけるつもり?」
「『私、あなたのこと好きだったのに......結婚出来て幸せでずっと続くと思っていたのに.....どこで間違ったんだろうね。どこですれ違ったんだろうね。私にはもうわからないよ』」
「『......本当のことを話すよ。俺はその女のことが好きだった。そして、やってはいけないことをした。一時の情に流されたんだ。全く自分でも愚かだったと反省している。凄く反省してる。だから、やり直しのチャンスをくれ......いや、ください。今度こそ俺は道を誤らないから』」
「『やり直すチャンスか......ねぇ、知ってる? 人生生きていれば何度でもやり直せるって言うけど、過ぎ去った時間はやり直せないんだよ。それに年老いていくとやり直せることも限られてくるし、その気力も減ってくる。それでもやり直したい?』」
「『ああ、やり直したい』」
「『そう、なら×××××××××××××』。さて、入る言葉は何でしょう」
「長い。とにかくひたすらしつこく長い。それになにこのドロドロした感じ」
「私が見ていた昼ドラから抜粋しました」
「ひるどら? よくわからないけど、その話凄く興味があるよ」
「話の続きってないんですか?」
「ありますよ。まあ、その後の展開なら話してあげてもいいですけど、先に問題に答えてくださいね。おっとここで、最初に回答するのはマユラさん」
「しっかりと愛し直してね」
「マユラさんらしい慈愛に溢れた回答ですね。ですが、残念ながら違います。この女性はもっと汚れています。次は......メルトさん」
「死ね」
「ストレートですね。まあ、そのぐらいの近さでいいと思います。私個人の判定ですが......それはアウトです。もう少し女性の言葉の言い回しを意識しましょう。それでは最後にルルさん、お答えください」
「『来世で私も会いに行くから愛してね』ですか?」
「正解、正解、大正解です! いや~、まさか寸分たがわず回答するとはすさまじいポテンシャルの持ち主。ちなみに、その続きは夫を殺した後、カーテンに隠れていた浮気の女性も一緒に殺すですね。あの世ぐらいは一緒にいさせてあげようという配慮らしいです」
「け、結局女性が一番クレイジーですね」
「もしかして『だった』って言った時点でもう冷めていたとか?」
「ありえる」
「さて、これまだ4問めですからね? あと16問はありますから、とっとと行きましょう」
そうして、順調にクイズは進んでいき、なんだかんだありつつ知力勝負はマユラが優勝した。
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