第31話 本来は普通に企画入るつもりだったんですよ?

「さて、第1回モテ女大会もついに終盤となってしまいました。いや~、悔しいですね。もっと女の子同士がもみくちゃになってる姿が見たかった出す......次はそういう企画多めに入れましょうかね? ともあれ、張り切ってまいりましょう。皆大好き、気力勝負~! はい、拍手拍手~」


「皆という言葉は是非訂正して欲しい。もはやこの企画は一人のためにある」


「まあ、何だかんだでここまでやってきちゃったし、どうせなら最後までやって気持ちよくユノさんに奢ってもらおう」


「あ、私いいお店知ってますよ。ちょっとお高いんですけど......」


「ちょっとちょっと私が必要な会話に私を混ぜないなんてどういうことですか。それに何しれっと奢る流れを確立させてんですか」


「どの口がそれを言っているのか。付き合ってあげるんだから、それぐらいの出費はもはや義務すらある」


「ま、まあ、確かに振り回していたことは確かですからね。あくまで考えておくことにしときましょう。考えておくだけです。ともあれ、早速気力勝負といきましょうか」


 ユノの至って清々しい顔を見てメルトは「全く反省する気がないな」とため息を吐いた。

 伊達にあの男と一緒にいないということか。


 すると、ここでマユラがユノに質問する。


「気力ってなにするの? 催眠魔法とかかけてそれに耐えれば勝ちになるってこと?」


「いや、それも考えたんですが、地味ですし、何よりそんな書く文章が長く持たないというか。まあ、そんな感じで予定を変えます」


「今の誰の意見って......書くってどういうことですか?」


「天の声です。言い換えれば創造主の声ですね。最近口内炎で苦しんでいた人の声です。そんなことより、企画内容に移りますよ。簡単に言えば、あなた達には演技をしてもらいます。この森の少し奥に湖があるので、そこでこの世界に転生してきた主人公があなた達とバッタリ出くわす場面をやってもらいます」


「どうして今更出会いなんかを.......」


「何を言ってるんですか! 出会い、それ即ち美少女とこれから関係を育むロマンの第一歩じゃありませんか! この時にどれほど魅力的なヒロイン像を作れるか。ぶっちゃけ、この作品のヒロインは魅力で言えば地を這うような感じですし、他の作品じゃどうか知りませんけど女神で亀甲縛りされたの私ぐらいじゃないですか? 知らないですけど」


「な、なんか、ダークな感じになっちゃったね。というか、これ完全に天の声だよね? 創造主がいい機会だからって愚痴吐いてるよね?」


「そもそも魅力的なヒロインって何をもってヒロインなんでしょうね。そもそも作品の少女が全員美少女って言うのがおかしいんですよ。創造主絶対幻想に取り憑かれてますよ。幻想という泥沼に片足どころか両足突っ込んでもがけばもがくほど沈んでる感じですよ。どうせ陰キャでしょうね。口内炎出来た陰キャですよ」


「なんかヒートアップしてません? これ誰か止めた方がいいんじゃ......」


「正直、もう少しリアリティを持たせた方が良いですね。異世界という違う世界観で自由にやるのは結構ですけど、大体全員美人ってどういう世界ですか? 私はめっぽう嬉しいですけど、絶対そうじゃないですからね? パーティーの一人に銀〇にいる猫耳団地妻ぐらいいればリアリティはグッと上がりますけど」


「そんなメンバーがいてむしろ誰が読みたいの?」


「もしくは圧倒的な個性を持った存在ですかね。ゲロインとか。美少女で最強の傭兵部隊の国出身にもかかわらず、よくゲロを吐くことからつけられた感じですけど」


「ゲロインはいないけど、酒飲んで大体吐いてる主人公ならいるよ」


「正直、勝手ながら思うんですよね。そろそろ最強って枠もサブに入る頃合いなんかじゃないかと。最強はやっぱりスカッとして気持ちいですけど、ネタが被り過ぎて最近中だるみの時期が来てたりするんじゃないですか? となれば、発想を変えてメインにするはずの最強をサブっぽくしてみたらどうだというのがこの世界さくひんです。ギャグ×最強でやってますが、もうギャグ色が強すぎて創造主自体無駄に強く設定してる主人公のこと時々忘れてますからね」


「そんな発言して大丈夫なんですか?」


「大丈夫ですよ、あの口内炎創造主はもはやこの世界では自分のバカを暴走させてますからね。露呈どころか露出狂になってそこら辺を駆けまわってる状態ですからね。というか、ぶちゃけほんとにアホですから。いろんな騒ぎで生じた時間でもとより二本連載してたところで止めればいいものの、三本目始めてますからね。そして、今自分で自分の首を絞めてる状態ですから、本物のアホですよ」


「もうやめてあげたら? なんかこれ以上言ったら、この世界ゲシュタルト崩壊するんじゃない?」


「まあ、そうですね。さすがに私がこの世界をある意味破壊にもたらそうとするのはいけませんからね。なんせ私は女神ですから。そんなバカな上司のもとで好き勝手動いてやりますよ」


「だいぶ今も好き勝手やってたと思うんだけど、それ以上に好き勝手するつもりなんだ」


「も、もはやこの図太さには一種に尊敬の念を覚えます」


 ユノは滑りに滑った口に軽くチャックすると一回深呼吸。

 そして、気を取り直したかのように先ほどのやり取りをなかったことにした。


「さて、早速今やったように各々の考えで演技してもらいたいところですが、せっかくちゃんとした主人公がいるんで、その主人公に人肌脱いでいただきましょう」


――――――数分後


「で、何? 今さっき超いい感じにメダル落としてたんだけど。今、賭けた所持金の20倍ぐらいになってたんだけど。あの流れは絶対100倍いけたんだけど」


「いいえ、残念ながらそのままあなたが辿る道はゼロ倍です。むしろ、私に呼び連れ出されてそれだけの報酬が出たことに感謝しなさい。まあ、どうせあぶく銭ですからすぐに消えるでしょうけど」


 ユノが連れてきたのは禅であった。

 禅は今日は完全にオフといった感じで、普段は一応つけている胸当てやカタパルトのようなものは見受けられない村人の服だ。


 禅は事情を知らされないままにユノに連れ出されたせいで、せっかくツキが回っていた台をチャラにされて不機嫌な様子だ。


 そんな禅を露知らず、ユノはざっとこれまでの経緯を説明する。

 ルルのことやルルが「モテたい」ということ。それ故に、この企画をやっていること。

 それに対して、禅は納得するように頷くとずばり告げた。


「要するに―――――ポロリか」


「ええ、ポロリです」


「その言葉に全てを集約させると語弊しか生まないよ~」


「冗談だ、冗談。とはいえ、随分とアホな企画に参加してるな。これって全てユノのためにあるようなものじゃねぇか」


「そんなことありませんよ! 失敬な!」


 そう抗議するユノであったが、禅の意見は全くもって至極真っ当な意見なために挑戦者3人はもはや深く頷く。


「ともあれ、やりたいことはわかった。俺がやるのは要するにこの世界に落ちて、ユノがいないバージョンを演じればいいんだろ?」


「簡単に言えばそうですね。ですが、いわゆる王道の主人公らしくですよ。呼び出した私の時にいきなりヘイトかまさないでくださいね」


「わかってるわかってる」


 そう言って禅はユノから離れると服とズボンをスポポーンと脱いでパンイチになった。


「よし、始めるぞ」


「終わりだよ、その王道!」


 ユノは早速潰しにかかった禅に猛抗議した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る