第40話 本物のやばい奴はやっぱり一次元違う世界にいる
前回、マユラ、メルト、ルル(ユノは未だ気絶中)は「青鎧の王子」ことラックと禅が知り合いであるということを知った。
そして、その話を禅から聞いてる最中ついに本人が登場。
その容姿はまごうことなきイケメンであり、禅と比べれば天と地ほどの差がある黄金比で形成された顔を持つラックはまるで禅の忠犬のようであった。
「それで、禅さん。今日はこんなところで何してるんですか?」
「まあ、ちょっとした相談をな。そういうお前こそ、こんなところで何してるんだ?」
「僕は次に行くクエストの準備をしていたのですが、偶然禅さんを見つけて思わず会いたくなって」
「「(乙女か.....!)」」
メルトとマユラは出来る限り声を殺しながらも内心ツッコまずにいられなかった。
なんせ先ほどからずっとラックの頭とお尻から耳と尻尾が見えているのだから。
それはもちろん、ただの幻視であるがもはや本物ではないかと思うほど。ほら、尻尾振ってる。
「あれ? これって最大の敵はゼンじゃないか?」と思っている二人がふと横目でルルを見るとルルは瞳をキラキラさせて眺めている。
まるで少女漫画に出てくる王子様をずっと夢見ていた少女のように、その額には「感無量」という言葉が深く刻み込まれて見えた。
二人はルルの肩をちょんちょんと叩いて現実に引き戻すように声をかけた。
「ルルちゃん。おーい、ルルちゃ~ん」
「はっ! な、なんでしょうか。す、すいません、ついうっとりしちゃって」
「うんうん、わかるよその気持ち。
「いや、それ恋のトキメキじゃなくて。スカトロのトキメキだから。むしろ、トキめいちゃだめなやつだから。全然フォローになってないよ」
「あ、それで体調不良になったところを看病するんですよね! 弱くなった姿を誰にも見せたくないと恥ずかしがりながらも、ちょっと子供みたいに素直なところにトキめいちゃったりして」
「え、話続くの?」
「わかる~。素直で従順で弱っているところをいいことにちょっとイケないことをしたくなるよね。相手の両手両足縛って、『ここにも熱溜まってみたいだから出してあげる』とか言って一線超えたくなるよね~」
「何一つわかってないけど、それ。え、どうやって会話のキャッチボールしてるの? ルルが清潔なボールなげてるのに、マユラがモザイクはいるボール返してるけど。黄金のボール返してるけど」
「看病と言えば、やっぱり食べさせてあげるシチュエーションとかいいですよねぇ~。こう、スプーンを相手の口に近づけて『はい、あーん』とか言いながら、それを食べてもらうんです。あ~、妄想が止まりません!」
「そうそう、そこにちょっと惚れ薬とかもって相手が弱って意識が混濁しているうちに、自分のことを好きであるということを刷り込むのもたまらないよね~。そして、元気よく回復した後に本当の気持ちを理解したゼンさんがその思いをぶつけに来るアバンチュール!」
「だめだ。もう片方の妄想が過激すぎる。自分が言えた義理じゃないけど、やってることが完全に恋に病んでる人のソレ。しかも、さっきから一線超えることしか言ってない。というか、いい加減帰ってこい!」
メルトはマユラとルルの頬を掴むと割と強めにムニーっと掴んでいく。特にマユラには。
二人は痛がりながらも、自分が妄想の世界で捕らわれたことに気が付きハッと目を覚ます。
すると、二人はそんなだらしない姿を見せていたことにルルは恥ずかしがり出し、マユラは焦った顔を見せた。
「わ、わわわ、私はなんてことを......! 妄想の中とはいえ、完全にその......ちょっとえっちなことに......あ~、こんな変態じゃ嫌われちゃいますぅ~」
「安心して、本物の変態は隣にいるから」
顔を覆ってしゃがみ込むルルにメルトはそっと肩に手を置いて横に指を向ける。
「やばい、竿包み(※この世界でのコン〇ーム)でやってない! このままじゃ、しばらくできないじゃない! あ、でもそれはそれで......ぐへ、ぐへへへ。とはいえ、もっと楽しむためにはやはり他の体位も極めなければ。やばっ、考えただけで処女懐妊しそう」
「ほらね。もう私が説明するほどでもないほどやばいこと言ってるでしょ? それにルルが恥ずかしがっていたエッチなことも、こんなにも堂々と言えているこの女は淫乱を軽く通り超してもはややばい領域に至ってるから。
ルルなんて可愛いものだよ。特にこの女の真横になっていると」
そうルルに言いつつ、メルトがチラッとマユラを見るとマユラは母親の顔でおなかを撫でている。
その行為にメルトは人生でゾゾゾッっと一番ともいえる鳥肌が立った。
確かに恋は盲目にさせるとよく聞くが、そこまで盲目になったものを見ることない。というか、見たくない。
メルトが目を逸らすと真顔で目がスンッとなったルルと目が合った。どうやら自分よりやばい奴を認知したらしい。
そして、メルトがルルに手を差し出すとルルはその手を握って立ち上がらせてもらう。
それから、二人はマユラからそっと距離を取ったのであった。
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