第23話 今回の俺の出番って下ネタ言って、ぶっ飛ばされただけなんだが?
「今更な話だけど、本当によく私を助けようと思ったね。ずっと殺そうとしていたのに......全然死ななかったけど」
「なら、それでいいってことじゃねぇか。殺そうとしていたとしても、結局生きているならそれは何もしていないと一緒だ」
「解せない」
「まあ、そもそも頭を確実に爆破されて生きている時点で頭がおかしんですけどね。私自身もそこまでの加護を与えたつもりは無いですよ。酔ってたから知らんけど」
「生きてることは素晴らしいことだよ。生命の神秘を味わえる可能性があるということだから」
陽は昇って翌日、メルトを解放した禅、ユノ、マユラの三人はメルトの案内でメルトの所属していた組織のところへと向かっていく。
色々と事態が急展開すぎて未だ混乱しているメルトだが、自分が自由になれるチャンスがあるのなら乗った方が良いと判断し今に至る。
そして、現在は鬱蒼とした森の中に進んでいる。その森は深いのか奥に行くほど周囲は暗くなっていく。
「こんな所にアジトがあるのか、まあらしいちゃらしいな」
「ですね。むしろ、明るい場所で堂々と話してたらおかしいですけど」
「こういうところって少しジメっとしてるからスライムの繁殖にもってこいなんだよね~。う~ん、ちょっとさせちゃおっかな」
「どの流れで繁殖になったんですか? あと、『ちょっと飯食いにいくか』的なノリで繁殖させないでください。スライムって意外に討伐が面倒なんですから」
「大丈夫だよ。すぐに終わるよ。さきっちょ、さきっちょをツンとさせるだけだから」
「俺のそのタイプのAVを騙されて見たことあったわ。あれはひでぇ内容だった」
「ひでぇのはあなたの思考回路ですけどね。なんでそこ掘り下げたんですか。全然必要ないでしょ......あ、わかりました。どうせ、それってアニマルビデオとかの略でしょ? そして、私に赤っ恥をかかせる算段ですね。でも、ざんね~ん。そうはいきませんでしたよ!」
「いや、ちげぇけど。アドベンチャービデオだけど。ただし、男と女の二人が狭い部屋で夜に大人の階段を冒険するっていう」
「はい、わかりました。私が悪かったですから、そこを掘り下げたのは私も同じですからもうやめましょうこの話。それに、確かにアドベンチャーですけども、その嘘のつき方全然隠せてないですからね? むしろ、直接的ない分そっちの方がいやらしさがありますよ」
「やはりゼン様は
「言わせませんよ! というか、マユラさんが発端なんですからちょっとは自重してください! ああ、こういう時に自分のステータスが弱くされてるのがもどかしい!」
これからメルトの組織を潰しに行くというのにわきあいあい猥談である。しかも、隠そうともしない。
この3人は緊張感というものがないのかと思わずため息が漏れてしまうメルト。そして、そっとまだ良識がありそうなユノに聞いた。
「あなた達っていつもあんな感じなの?」
「心外ですね。私をあんた脳内淫乱野郎どもと一緒にしないでください」
「いや、そっちの意味じゃないんだけど」
「私の脳内はお金と休みで埋め尽くされています!」
「あ、もういいや」
意気込んで言うユノにメルトを冷めた目を向ける。うむ、パーティを組むにはやはりどこかしら似たような部分があるということらしい。
そして、3人で共有するのは総じてダメであるということか。この3人ならば寄って集まっても文殊の知恵にはならなそうだ。
「あ、ここら辺は罠が多いから気を付けて」
「まあ、そうですよね。大丈夫です、こう見えて罠にはかか――――らっ!?」
「いや、フラグ回収が早すぎるわ!」
先導するマユラが振り返って忠告すると自信満々に意気込んだユノが真っ先に落とし穴に落ちた。
そのユノに咄嗟に手を伸ばして、腕を掴んだ禅はすぐに持ち上げようと肘を曲げる。
「あ、一つとは言ってないよ」
「がっ!?」
ユノを持ち上げた瞬間、禅は横から大きく振り子運動してきた木づちのようなものに吹き飛ばされた。
そして、禅は近くの木に叩きつけられる。
「ゼン様!」
―――――カチッ
そんな禅を見かねたユノは咄嗟に禅へと近づいていく。その瞬間、足元がへこんでスイッチが起動した。
「なんで!?」
すると、その爆発のコンマ秒後に禅のいる位置に巨大な爆発が起こった。
その爆炎に禅は全身を包まれていく。
「ぁ......」
その忠告からたった数秒にも満たない時間で起きた光景にメルトは唖然とした表情が隠せないでいた。
さすがのスリーコンボ。まさかここまで立て続けに起こるとは。しかも、主に禅に。
まあ、どうせ生きているだろうが、不運過ぎじゃなかろうか。仲間を助けておいて割に合ってない気がする。
そんなちょっと悲しみもこもった目で禅を見つめていると案の定禅は上半身の服をボロボロにしながらも、戻ってきた。
「ちょっと、割に合わないんだけど!」
メルトは「実にそうなんじゃないか」と心の中で同意した。
「助けてくれたことには感謝しますけど、別にあの程度じゃ死なないじゃないですか」
「いや、ユノ。それでも一応助けに......あ、でも瀕死の時の方が本能が子孫を残そうと動こうとするって聞くし、それもありなんじゃ」
「いや、ダメでしょ」
メルトは思わずツッコんでしまった。存外辛辣でなんか自分のことのように悲しく感じてしまう。さんざん狙ってたターゲットなのにもかかわらず。
自堕落は自業自得だけど、ちょっとかわいそうに見えてきたのでもし自由になったら少し優しくしようと思ったメルト。
「(まあ、興味試しはやめるわけじゃないけど)」
とはいえ、どうやったらあの意味不明な生物が倒せるのかを追求することはやめない。それとこれとは別だ。
そして、気を取り直して4人は前に進んでいく。
今度はメルトがしっかりと罠を教える。ユノが靴紐がほどけたというので、それを待っている間に禅とマユラはその罠の形状を覚えるように観察していた。
「すみません。お待たせしまたぁっ!?」
「うぉあ!?」
ユノは駆け足で戻ってくると途中の石で躓く。そして、その勢いのまま禅の背中を押していき、すでに見えている紐を引っかけながら、仕掛けにダイブしていく。
「あっぶねぇ!」
その瞬間、禅の真横から大量の矢が放出された。それは高速で禅へと迫ってくる。
いくら当たっても傷つかないとはいえ、痛いものは痛い。なので、出来れば当たりたくない。
故に、咄嗟に体を捻って当たる数を最小にしていく。
そして、罠ゾーンを抜けてズサーッと地面を滑っていく。
――――――ガチャコンッ
「え?」
しかし、待っていたのは別の仕掛け。それは禅ごと地面を軽くへこませると遠くから何かが飛んでくるのが聞こえた。
それは巨大な岩石。そして、それは禅の数メートル手前で着地すると途端に禅の体は勢いよく跳ね上がった。まるでシーソーでもって人を勢いよく飛ばしたみたいに。
「ああああああ~~~~~~!」
禅の恐怖にも似た叫びとともに進行方向の先へと大きく吹き飛ばされていった。
それを見た瞬間、メルトは焦る。
「まずい、あのままだと本部に突っ込んでしまう! そうなると、あいつは一人で敵陣に突っ込んだのと同じ!」
「あ......えーっと、これは私やらかしましたね?」
「めっちゃものすごく。とにかく急ごう」
そして、メルト、ユノ、マユラは禅を追いかけるように走り出した。
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