第42話 というわけで、結果モテるのは陽キャ
「へぇ~、それじゃあ、ルルさんは家族のために冒険者になったんだ。かっこいいね」
「いえいえ、私が貢献できることがこれぐらいだっただけでしたから」
ルルとラックは放しながら森の中を進んでいく。その周りにはラックと同じパーティの青年の姿も見られるが、二人の気を遣っているように少し離れた距離にいる。
まあ、簡単に言ってしまえば二人も禅の協力者なわけで、事前に今回の事情を話してあるのだ。
そして、そのラックとルルの姿を後ろから眺める4人の姿が木陰にあった。
「今のところ順調ですね。緊張で会話出来ないんじゃないかと心配しましたけど、思っているよりスムーズにイケている感じです」
「それにしても、こういう姿を見守ってるのってなんだか自分のことのようにドキワクが止まらないよ」
「こんな優しい尾行もあるのね。常に尾行=殺しみたいな構造であった私にはもはや隔たっていた壁がどんどん崩れ去っていってるんだけど」
「そんなもんでいいんだよ。もう誰かを殺す必要なんてないんだ。なので、俺を未だに殺そうと画策しているのは是非ともやめていただきたい」
「無理。今のところ、それが私の生きがいだから」
瞳をキラキラさせて告げるメルトに禅は思わずため息を吐いた。結局、長年染みついた思考はそう簡単に抜けないということなのか。
「いつか殺されそう」と思いながらも、「まあ、なんとかなるだろ」と禅は楽観的でもあった。
「にしても、ラックさんはともかく、他の二人はよく協力してくれる気になりましたよね。男の嫉妬は女よりも軽いものですけど、やっぱり自分より友人が幸せになるのは許せないって感じじゃないですか」
「それってどんだけ心狭めぇんだよ」
「ほら、『リア充爆発しろ』ってあるじゃないですか」
「あ~、まあなくはねぇが、結局のところ彼女できねぇのって運もあるだろうけど、そもそも自分の努力なしに成功するはずねぇだろって感じで、俺的にはその言葉を言った本人が自爆してる感じなんだよな」
「ほぇ~、禅さんって意外にそう言う価値観なんですね」
「ねぇねぇ、何の話?」
たまにある禅とユノの前世の知識での会話に興味を持ったマユラは思わず尋ねてきた。
禅とユノは一度目を合わせ話すかどうかのアイコンタクトを取ると「話しても問題ないだろ」という結果に行きつき、話すことにした。
「リア充って言うのは“現実が充実”してるって意味なんですよ。だから、本来なら別に彼氏彼女がいなくてもその人の気持ち次第でリア充のはずなんですけど。要するに恋人がいればリア充みたいな意味合いで使われてる言葉です」
「なんとも不思議な言葉だね~」
「それだったら、私は日々どうやったら殺せるかの研究で充実してるってことか」
「それは充実させないで欲しいんだが。もっといえば、やめて」
「やだ」
禅の言葉に顔をプイっと横に曲げ全力で否定するメルト。その一方で、マユラはその言葉を解釈した上で禅の発言に質問した。
「それじゃあ、ゼン様が言いたいのは『お前らに彼女が出来ないのは努力不足だ』ってことですか?」
「そうだろ。まあ、それを思っても口に出すことはほとんどなく、むしろ冗談みたいな意味合いでその言葉を使うことが多いけどな。でも、ほんとに欲しがって願ってるなら、最終的にはそう言う結論に至ると俺は思う」
「意外と手厳しい意見ですね」
「そうか? 俺はどっちかっていうとそういうのに時間かけるよりもっと自分の趣味に時間とお金をかけたいタイプだったから持論が強くなるんだけど、やっぱりそう言うのって努力次第だと思う。
そもそも自分の見た目を周りが羨ましがるルックスでなければ、まず女性が一目ぼれする機会なんて訪れない。
自分が陰キャでそれでいて相手側からこっちに興味持つなんてもはや天文学的確率で、もっと言えば積極的にかかわろうとしなければ恋人になる可能性なんてゼロに等しい」
「今、ほとんどのラブコメ漫画や小説を否定しましたが大丈夫ですか?」
「いやまあ、それはそういう設定であるからして受け止められるだけで、現実的に言えば『たまたま電車で向かい合った席に座っている子が実は自分のこと好きだった』みたいな妄想に更けて待ちの姿勢を決めるよりは話しかけて1パーセントでも確立を上げた方が建設的ってだけ」
「案外言えてるかもしれない。モテたいって言ってる人ほど、実のところそれほど積極的に動いていない。基本相手の行動待ち。他力本願スタイル」
「そゆこと。どうして陽キャがモテるかって考えてみれば会話を重ねて好感度を稼いでるからであって、本来だったら恨むこと自体が筋違い。
もちろん、それが全てじゃないのは理解してるが、妄想を具現化したのがそれらの漫画や小説だとすれば、それらから甘さを引いたのが現実ってわけ」
「妄想が楽しいのは当たり前で全部自分のご都合展開であるからってわけだね」
「う~む、珍しくゼンさんがまともなことを言っているせいか全然否定できない。なんだろう、イライラする」
「いや、なんでだよ」
「ほら、ゼンさんってもっとこう......ダメであるからして、それを諫める私の有能さが際立つと言いますか」
「もうその時点でアウトだから止めておけ――――ん?」
「どうしました?」
禅が突然ルル達の向かった方向を見て険しい顔をする。その急な表情に切り替わりに怪訝に思ったユノが尋ねた。
すると、禅はわずかに口元をニヤッとさせ告げる。
「なーに、会話が一次試験とすれば、二次試験の
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