第33話 俺はただの被害者(切実)
「はい、それでは次はメルトさんです。どうぞ」
「なんか妙にやる気な紹介されて腹立つんだけど」
トップバッターにいろいろとやらかしたマユラとは違い、メルトはこのユノのユノによるユノのために企画に意欲的ではない。
まあ、それは最初からわかっていたことだが、それ以上にユノをやる気にさせないのは一言で言って―――――
「サービスシーンが児ポ(※児童ポルノ)に引っかからないか心配なんですよね。ほら、最近の同人だとJSとかでも性別上女であれば見境ないじゃないですか」
「わかる。特にメスガキ調教ものな」
「はっ倒すぞ、あんた達」
「いや、正直注意書きで合法ロリなので問題ありませんと言ってもねぇ? 見た目がどうにも幼いとそういう目に見られかねないですから」
「いやまあ、イチャラブものだったら読めるけど、やはり感覚がなぁ」
「そもそもの話、なんで私があの
「まあ、そうなんですけど、ぶっちゃけ面白ければアリかなって」
「本当にぶっちゃけたね~」
「むしろ清々しいです」
「こんな奴らに潰された元同胞たちに少しだけ同情するわ......はあ、要するに面白かったら、その設定でもアリってことなんでしょ?」
「まあ、そうとも言いますね」
「右に同じく」
「なら、やってやるわよ」
メルトは嫌そうな顔をしながらも顔をムニムニとほぐすとまるで幼児のように可愛らしい笑みを浮かべた。
そして、その状態で禅に近づいていく。どうやらもう演技は始まっているようだ。
「おじさん、ちょっとそこの湖でお散歩しない?」
「これはメスガキ設定ですね。同人では生意気な口調を調教で強制されるオチですが、まあ一応健全で投稿されてますからね。この小説」
「おう、いいぞ」
「それじゃあ、準備を始めるよー」
「準備――――!?」
メルトはその場から消えるように動き出すと禅の服をサッと切り刻みパンイチ姿にすると首に首輪をつけ、膝裏を蹴って禅を四つん這いにさせた。
そして、その四つん這いの禅の背中に乗るとメルトは再び告げた。
「さ、お散歩いこうか」
「「(お散歩ってそっち......!?)」」
ユノと禅は雷が落ちたように衝撃を走らせた表情になる。
お散歩―――――通常の男と女が二人で歩くような感じではなく、どうやら飼い主とペットという関係らしい。
そのあまりに突然な状況に未だ禅が飲み込めていないでいると背中に乗っていたメルトの態度が急変する。
「チッ、さっさと歩けよおっさん」
「痛った!?」
メルトは懐からサッとまるでソレ専用のような短い鞭を取り出すと禅の尻をぶった。
子気味良いバヂンという音と同時に禅は顔を歪める。それで歩かないでいると再び叩かれる。
仕方ないので背中にメルトを乗せたまま四つん這いで進んでいく。
「遅い」と叩かれ、それで速く進むと首輪から伸びたリードによって首が絞められる。
その明らかにおかしい状況を見てユノは思わず悟った。
「メスガキ(が調教する側の)調教プレイですね......」
確かにこれなら児ポには引っかからない。ただし、一応主人公張っている男の株はもともとあまり少ないのに大暴落中だが。
そして、メルトは禅を湖の岸まで連れて行くと告げた。
「おじさん、少し喉乾かない?」
「い、いや、乾いて―――――ごぼぼぼぼっ!」
メルトは禅の頭を足で踏んづけると禅の頭を無理やり水面に押し込んだ。
禅は突然のことで息を吐き出してしまう。
「そっか乾いてるんだね。なら、たーんとお飲み」
「ごぼごぼぼぼごぼ(い、息が出来ない)」
「ふふっ、喜んでる喜んでる~」
「あの......メルトさん? メルトさん聞こえてますか? メルトさーん!? そこのちっぱ―――――ぐへっ」
「大丈夫ですか!? あ、頭にクナイが!?」
「大丈夫ですよ、先っちょに吸盤ついてるから。それよりもメルトちゃん、ちょっと新しい扉開きかけてるね~」
「いたたた......って、ねーじゃなくて開きかけてるじゃなくて、完全に扉蹴破ってるでしょあれ!? そして、完全の扉の奥に入ってSモードになっちゃってますよね!? ちょ、メルトさん! それ以上はスト―ップ!」
「あー潤った」
「し、死ぬかと思った......」
何やら恍惚とした表情のメルトと対照的に死にかけで暗い表情の禅。
そんな二人を見てユノは開けてはいけないパンドラの箱を開けてしまったような気がした。
なので、何事もなかったように採点を始める。
「メルトさんありがとうざいました。それでは審査に参りましょう」
ユノ「3点」マユラ「6点」ルル「H5点」禅「K点」
「ルルさん、そのHってなんですか?」
「ハラハラポイントです。でもなんでしょう、ちょっとメルトさんを見てゾクッとしました」
「さー、聞かなかったことにしましょう......って、禅さんはまたKですか。まさかあなたもそっち側に扉を開きかけたって言わないでしょうね」
「こ、殺されるのK」
「あ、納得~」
ユノはまるで何事もなかったように気を取り直すと最後の選手の名前を呼んだ。
「それでは最後にしてダークホースであるルルさん、演技をお願いしまーす」
「頑張ります!」
「はあ、俺も切り替えるか」
「ゼンさんは気持ちを切り替えるのもそうですが、予備の服を用意したのでしっかり来てくださいね~」
禅はユノの用意した服を着るといつでも演技に入れるとルルに視線を送った。
ルルはその視線に気づくとコクリと頷く。
「あ~、どこだここは? 全然見覚えねぇ場所だな」
「そこのもの何者だ......です!」
「ほお、設定としては立ち入り禁止領域に思わず入ってしまった主人公に警告しに来た美少女って感じですかね」
「まあ、物語の設定としては無難なのかもね。他の小説でも見たことある」
「エアで弓を引いてる姿をしてるのはなかなかの演技力」
「まあ、恥ずかしそうにしてますが」
「ま、待ってくれ! 俺は怪しいものじゃない。知らずにここに入ってきただけなんだ!」
「そ、そうなんですか?......じゃなかった、なら、証明してみてください!」
「これはチョロインですね」
「チョロインだね」
「チョロイン」
「いや、そんなこと言われてもな......これでどうだ?」
禅はゆっくりと両手を上げて降参のポーズをする。その禅にルルは依然として弓を構えた姿勢のままゆっくりと禅に近づいていった。
その時、ルルは何もない平地で躓く。そして、咄嗟に手を伸ばした手は拳底のようになって禅のみぞおちに炸裂。
「ぐふぉ!」
突然にしてドラゴンに投げ飛ばされたときのような衝撃が腹部から背中にかけて突き抜ける。
その一方で、ルルの体勢は元に戻ることはなく、そのまま禅の股間にヘッドバット。
「~~~~~~!?」
「あああああ!?」
言葉にならない衝撃が禅の大事なアイデンティティに伝わっていく。
そして、ルルの方では額に感じるむにゅっとした感覚に顔を急速に真っ赤にさせ、目をグルグルとさせた。
「いーやあああああああ!」
「げぼらぁ!」
ここに格闘家がいれば見て納得するような素早い体捌きで禅の後ろを取ると全力で嫌がりながら、ジャーマンスープレックスを決めた。
禅の後頭部が地面に到達した瞬間、禅の頭を中心として半径5メートルが軽くへこんでいく。
そして、そのままの状態で固まった二人を見て三人は思いっきり引いたような顔にり、すぐにユノが告げた。
「演技部門、優勝ルルさん」
「「異議なし」」
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