第32話 んな、テンプレあってたまるか!
「さて、前回はスッと入る予定が思い切り創造主の愚痴を言ってしまいました。まあ、あれはあれで仕方ないでしょう。ということで、スッと始めちゃいたいと思います」
「あの、大丈夫......ですか?」
「うん、大丈夫。俺、なぜかユノに殴られると鼻血出るけど大丈夫。なぜか顔殴られて腫れあがってるけど大丈夫。よくわからないけど大丈夫」
前回最後にスッとパンイチになった禅はユノにボコボコにされて現在顔はアンパン男状態である。
鼻もある意味真っ赤になっているのでもはや寄せた節さえある。
「それで? こんな湖で何やるんだっけ?」
「演技ですよ。演技。これからテンプレ王道な男女の出会い方のシーンをやってもらいます。セリフはアドリブで結構ですが、ゼンさんには主人公らしいセリフをお願いします」
「やれるだけやってみよう」
「それじゃあ、トップバッターのマユラさんどうぞ」
森の湖にやってきたユノ達一行は“森の泉で転生した主人公がヒロインに出会う”というシチュエーションのもとに行動し始めた。
そして、一番目を任されたマユラはそのままの恰好で湖に入ろうとし始めた。
その行動にユノは思わず待ったをかける。
「ちょ、ちょっとマユラさん。湖で出会うシーンなんですけど、まあ湖で体を清めててあっれー!? って展開はわかるんですが、服着たままで行くんですか? 裸は自重して欲しいですけど、水着ならありますよ」
「大丈夫。召喚したスライムで濡れないようにしてもらうから」
「あ、なるほど。なら、大丈夫でーす」
マユラは湖に入水していき、腰辺りが浸かる深さまで歩いていくとチャポンッと水音を立てながら潜った。
そして、ユノの「よーい、スタート」という掛け声の後に禅は動き出してた。
――――演技中―――――
「あっつ~、なんだ? ここは。俺って確か死んだよな? んで、気づいたらここで目覚めたけど、どうなってんだ......っと水発見。喉カラカラだったし、ありがた―――――」
――――――ザッパアアアアァァァァンッ
その瞬間、俺の目の前から突如として水しぶきが上がった。
それは空高く水滴を飛ばし、そしてまるで水のベーゼを纏っているような可愛らしい少女が俺の目の前に―――――全裸で現れた。
『カットおおおおお! 自重しろって言いましたよ! マユラさん』
俺は思わず見えてしまったその艶めかしい肢体にすぐに目を逸らさないといけないと思った。
『え、これまだ続きます?』
しかし、やはり俺も男なのだろう。思わず目が釘付けになってしまうのだ。あのパイオツに。
『ちょ、止まってくださーい』
「な、なんだあの巨乳は!?」
俺の心臓が思わず跳ねるのがわかる。そして、それ以上に彼女の胸は跳ねていた。
まるで両手に持て余す大きな果実がマシュマロのような柔らかさをもって動いているではないか。
それでいて、誰もがみずみずしいと思うほどの張りのある肌艶。
水に反射して、肌に吸い付くように流れていく水滴はその妖艶さを増長させていく。
『落ち着いてくださーい。主人公そんな胸にガッツいちゃダメですよ。というか、いい加減二人ともやめなさい。そして、マユラさんはなぜ服を脱いでるんですか!?』
俺は聞いたことがある。
転生前に友人からこの世界のどこかには性別、種族も関係なく誰もが見惚れてしまう思考のパイオツがあると。
そのパイオツは過去に一度元世界で訪れ、貧乳派率いる平家に巨乳派の源氏が圧されていた時に、その溢れんばかりの巨乳が源氏を勝利に導いたのだと。
どこの世界もパイオツを求めている。
男は理想を求めすぎて現実と二次元の胸の大きさに区別がつかなくなっているが、その理由はきっとここにあったんだ。
そうこれこそが3次元に現れし、2次元のパイオツ。
「で、伝説の2.5次元のパイオツ――――――」
『パイオツの話はもういいわあああああ!』
――――演技終了――――
ユノは全力でダッシュしてくるとそのまま禅の背中を蹴り湖に飛ばした。
その勢いは湖に水柱を立てるほど大きく、しぶきがマユラに豪雨のように降り注ぐ。
しかし、そんな水でユノの烈火の怒りは鎮まらない。
「さっきからどれだけパイオツで引っ張れば気が済むんですか! 主人公の視点がさっきから胸に一点集中しすぎなんですよ! そもそも2.5次元のパイオツってなんだ! もとの世界ならここは2次元で今は3次元ですよ! 現実を認識しろ......っていうか、そんなテンプレ主人公いてたまるかああああ!」
「まあまあ、落ち着いてよ。ほら、ここに湖あるからちょっと頭冷やして」
「何も上手くないわ! というか、そもそもマユラさんが真っ裸にならなかったらそうならないんですよ! 無駄にけしからんパイオツをひけらかさないでください! というか、隠すべきとこは隠せ! さっきから丸見えなんですよ!」
「大丈夫だよ。ほら、心のモザイクが張られてると思うから」
「全然大丈夫じゃないですよ! 人っていうのは見えないものがあると想像で補うんですよ! それでこれまでの流れできっと誰もモザイクかけてませんよ! モザイクよりもより高画質に脳内で再生してるんですよ!
実際絵よりも想像の方が何倍も自分好みに想像されるからエロイんです! だから、自重してくださいと言ったんですよ」
「えー、でも、師匠に女の武器は余さず使えって言われたしな~。ちなみに、ゼン様はどう思いました?」
「ふんっ、興味ないね。俺はただ
「鼻血出してる奴が全力でスカした顔してその言葉を言うんじゃありませんよ! もとの世界の全世界のF〇ファンに謝れ! そして、ク〇ウドに謝れ!」
「ちなみに、大きさはどのくらいだと思いました?」
「ふんっ、Dだね」
「だからやめなさいよおおおおお!」
「残念、Eだよ」
「んな......!?」
「何に衝撃受けた顔してんですか! ク〇ウドの顔真似してその表情はやめろ! 私、割りにティ〇ァとエア〇スとジェ〇ーの次に好きなんですよ!」
「いや、割りに後ろだな。というか、叫んだ三人全員女性だし」
禅は服が肌に纏わりつく間隔を若干不快に思いながら上がってくる。
そして、マユラは一度湖に潜ると体に薄くスライムを纏わせながら出てきた。髪はやや濡れているが、体はあまり濡れていない。
一体どういう原理なのかユノには皆目見当がつかない。
とにもかくにも、だ。
「ちょっと、かなり酷かったですけど、ぶっちゃけトップバッターにマユラさん選んだ時点で出オチ感が凄いんですよね。メルトさんとルルさんにあれ以上のインパクトを超えられるかどうか......」
「まさかアレが基準になるの? 本気?」
「わ、わわわ私も裸にならないといけないんでしょうか!?」
「いや、こっちの話です。気にしなくても全然いいですよ。というか、それでも割と真面目な感じを求めてたんですけどね。混ぜるな危険を思いっきりかき混ぜた感じです。ともあれ、一応他の肩には採点してもらいましょう」
「俺もか?」
「そうですよ。それじゃあ、分けておいたフリップに点数をどうぞ。ちなみに、10点満点ですよ」
ユノ「4点」、メルト「3点」、ルル「6点」、禅「K点」
「......K点って何ですか? Eならまだわかりますけど」
「正直、めちゃくちゃノクターンに行きかけたから」
「一回死んでください」
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