第37話 「魔女」と言えばあの子.....の隣にいる猫

「それじゃあ、講義もここら辺で。というか、思いっきり趣旨と外れてるので本題に戻りましょうか。それじゃあ、ルルさんは本職の方からメイクのコツとかを知ってください」


「わかりました」


「それじゃあ、私達は終わるまで片隅で待ってるね~」


「がんば」


「ねぇ、俺必要なさそうだから帰って――――――」


「それじゃあ、少しだべってましょうか」


「いや、帰りたいんですけど......って、散々しゃべったのにまだしゃべんのかよ!?」


 禅は強制連行のままに店の空きスペースに連れていかれる。

 すると、先ほどの抗議が店員にとても印象が良かったのかイスすらもなかった場所に、人数分の椅子とテーブルを用意し、飲み物まで出してくれるという優遇。


 そこまでしてくれると若干申し訳なさもあるが、まあ親切にそうしてくれるならありがたく受け取ろうではないか。


 禅たちは椅子に座ると長らく立ちっぱなしの足の疲れを取るように軽く足を伸ばした。


「ふぅ~、なんかすげー長い時間立ってたような気がする」


「ゼンさんは途中までカジノで座っていたのでアウトです。そのセリフはむしろ私達のセリフですよ」


「というか、私達の疲労は主にユノちゃんのせいだけどね」


「主にじゃない。絶対的に」


「お前、俺を呼ぶ前にもなにかしてたのかよ......」


「心外ですね。全てはルルさんのためです。私の欲もなくはありませんが、1割程度ですよ」


「「あれが1割......」」


 マユラとメルトは思わず疲れたような顔をする。まさかあのようなテンションで1割とは誰も思うまい。

 というか、認めたくないという節もある。

 あれがもし10割だったらどうなるのか。知りたくもない事だ。


 すると、禅は机で頬杖をついてルルを見ながら尋ねる。


「でさ、大まかなことしか聞いてないんだけどよ。あの子は誰かに好かれようとしてお前らみたいな変人3人組に力を借りたんだろ?」


「変人って何ですか......まあ、そうですよ。イケメンの男性冒険者に好かれようとするために一生懸命努力してるんです」


「それにあの子をこき使っていたあの3人にも一泡吹かせたいしね」


「それで、その3人がそのイケメンを狙っているから、逆に奪ってやって“ざまぁ”する気でいるわけ」


「なるほどね.....というか、別に何もしなくてもあの3人で足の引っ張り合いするだろ? ほっときゃいいんじゃねぇか?」


「それも考えたんですが、それだと後ろ盾がないんですよ。仮にルルさんが何もしないでいて、勝手に3人が自滅したとしたら、そういう場合ってお互いを攻めるよりも共通の敵を見つけて痛めつけてストレス発散する方が早いんですよ」


「それが自分と同等じゃなく、確実に弱いとわかっている立場の人なら尚更ね」


「ストレスのはけ口として利用されたら終わり。ストレスは怒りに近いもの。

 人は時に起こることでストレスを発散して自分をセーブする。

 けど、その外れすが強ければ強いほど行動もエスカレートしていく。それも3人からじゃ耐えられない」


「意外と考えてんだな。まあ、確かにお前らじゃ後ろ盾弱いだろうしな。ギャンブル女神に、脳内ドピンクにサイコサイエンティストだし」


「「「そんなことない|(ですよ)」」」


 禅の言葉に3人は一斉に抗議した。禅は間違ったことはいっていないのに「心外だ!」と言わんばかりの声量。ちょっと、周りの店員がビクッとしている。

 しかし、禅も負けじと応戦する。


「いやいやいや、全くもってそうだから。むしろ、否定できる材料が少ないから。確かに真面目パートにいくと真面目にちょっと知的ぶってるのは知ってるよ?」


「知的ぶってるって何ですか? 現に知的ですよ」


「いや、ぶっちゃけお前らのキャラを無駄に強めてるのはその他の同じジャンルでも類を見ない個性だからな。

 なんだよ、女神に? 魔女に? 暗殺者って。今時そんなありふれたキャラは求めてねぇんだよ。

 大体な女神はこ〇すばの時からキャラ奪われてるし、暗殺者はハ〇ターハ〇ターの頃から、魔女に至っては魔女の〇急便から奪われてんだ。

 言っておくけど、お前らのギャンブル、ドピンク、サイコを除くとただの無個性のモブと等しいからな」


「「.....?」」


「ゼンさんゼンさん。そのネタ伝わるの私だけなんで。言いたいことはわかりますけど、それを例えに出されても2人にはわかりませんから。

 というか、魔女の宅〇便に関しては完全にゼンさんの好みですよね」


「なぜか昔のあの時は無性にキ〇が好きだった。そして反対に、作中に出てくるト〇ボがしゃべるたびになぜかイラッとしてたね」


「急にそんなこと言われても反応困りますよ。キ〇っていうとあれですよね? ほぼ黒一色の.....」


「そうそう、それでいて小さくてな」


「そうですね、それに可愛らしくもあり」


「ゆらゆらと動く尻尾がまたよかった」


「うんうん尻尾......尻尾? いや、ゼンさんそれキ〇じゃなくてジ〇!」


「いや、あってるよ。魔女の宅急〇ってぶっちゃけ一番かわいいの猫だろ」


「どう歪んだ見方してるんですか。それただト〇ボ見てヘイト溜めてるだけじゃないですか」


「なぜかわからんが、あのやたらでかい黒ぶちメガネに腹が立った」


「完全な私怨ですね」


 そして、そのまま禅とユノは魔女〇宅急便談義を始めた。その2人を見ながら、マユラは呟く。


「2人は何の話をしてるのかな?」


「さあ、2人は身元不明だったから、私達の知らないことがあって当然じゃない? それよりも、暇だから私が手に持っているコインを当ててみて。もちろん、引っ掛けもあり」


「いいね、何か賭ける?」


「んじゃ、勝った方が1食奢る」


「賛成」


 そして、2人も2人で暇を潰し始めた。

 それから、ルルのメイクが終わるまでしばらくの時間を過ごした。

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