第16話 京街散策 壱
正午を少し過ぎた頃、
「衛実、本当に出歩いても
医者からの『無理な動きは
不安な
「大丈夫だ。『なるべく、安静に』ってことだから、別に出かけるのを
それに、これは俺がそうしたいと思ってやっている事だから、今日は楽しもうぜ」
そう言うと、
「ほら、金にも余裕はある。弥助も
と、少し
それを見た朱音は、
「この報酬も本来であれば、あの者達に渡っていたのやもしれぬな」
朱音が
「朱音、そうやって、
そう言う衛実の
「だからこそ、俺達は今、ここで生きていることに全力で向き合わないと行けねえ。
この
そうやっていつか死ぬかもしれなくなった時に、変な
そして朱音を見つめ、
「だからな、朱音。今日は全力で楽しもう。昨日の事はしっかりと受け止めて、それを次に
だって、俺達は生きているんだから」
衛実の力強い言葉に
「そうじゃな。ぬしの言う通り、今を全力で生きることを心がけよう」
そこで
「ぬしの言葉で、気が楽になった。……ありがとうなのじゃ」
と小さな声で
「やっぱり、ぬしは優しき者であるな!」
と、言い放つ。
そのあまりに真っ直ぐな言葉に、今度は衛実が
「ったく、よくもまあ、
そんな衛実の反応を少し面白く思った朱音は、ここぞとばかりに追い討ちをかける。
「なに、今まで、ぬしにはやられっぱなしであったからな。
朱音の
「ほ〜お? 言ってくれるじゃねえか、朱音。今日という今日は、
朱音も負けじと見返し、
「
そう言ってお
「それじゃ行くぞ、朱音。はぐれるなよ」
「分かったのじゃ」
そんな風にして2人は、はたから見ればまるで仲の良い
「衛実、ここは?」
「ここは、
そう言って衛実は、
「うむ。じゃが、何となく浮いているように見える。特にあそこ、
その様子を見た衛実は、いたずら好きの子供がよくするような顔をして、朱音を
「そうか。それじゃ、まずはあそこに行くか」
「ええっ!? しょ、
「ああ、もちろん。俺もあそこには、1度くらいは行ってみたいと思っててな。
「ま、待て。ぬしは、わらわの話を聞いていたか?
わらわは、あそこには行きたくないと言ったはずじゃぞ」
「聞いたさ。だからこそ、
さ、いつまでもグズグズしてないで、さっさと行くぞ」
「い、嫌じゃ! やめよ衛実、って、なぜこの時ばかり力強くわらわの腕を引くのじゃ!
頼む、
衛実に
何とかして
「よし、
衛実達が『清水の舞台』に着いた時には、
「ったく、そんな顔すんなって。
単に、お前に嫌がらせがしたかった訳じゃなくて、こっからの
ほら、どうだ? 結構良いだろう?」
衛実の問いかけに悟り顔のまま
すると、その目に京の街でも
「わあっ! す、すごいのじゃ!」
すっかり上機嫌になった朱音は、もっと見てみたいと
「あ、おい! 危ねえぞ!」
欄干から身を乗り出し、そのまま落ちそうになった朱音を、衛実が引き戻す。
それによって
「なるほどな。確かにここからの眺めは、とても良かった。
じゃが衛実、なぜそれを先に言ってくれなかったのじゃ?」
朱音の少し
「悪かったって。次はちゃんと言うからさ。そうふくれっ
「はぁ、もう
それから『清水寺』をゆっくりと
「おや? もしかして、弥助さんの所の
衛実達が声のした方向に顔を向けると、
「あんたは、昨日の……」
「昨日の今日でなんですが、
「ああ、まだ派手な動きは出来ないが、一応、
「いえいえ、用心棒の数が減っただけですから、商売には問題ありません。
ただまあ、そうは言っても腕が立つ奴らでしたからね、
それを聞いた衛実と朱音は申し訳ない気持ちになる。
「その、本当にすまなかった」
「いいんですよ、昨日も言ったでしょう? 気にすることはないと」
反物屋の主人の
「ありがとう。代わりといってはなんだが、ここの
「いいんですかい? それなら、今日は特に
そう言って反物屋の主人は、店に
「これなんか、どうです?
やっぱりお嬢ちゃんには、
こいつに
衛実は、反物屋の主人が持ってきてくれた品と朱音とを
「そうだな……。確かにこれは良く似合う。朱音、お前はどう思う?」
「問題ない。わらわにとっても
「そうか。よし、じゃあ八兵衛さん、その2つの反物をいただこうか」
「
「ああ。そうさせて
反物屋の主人と別れてしばらく歩みを進めている中、ふとある疑問を
「わらわの
「弥助に聞こう。あいつなら、そんくらいの
『弥助』という人間の
「そうなのか。では、そろそろ
弥助の家を出た時には真上にあった太陽が、今は向こうに見える低い山と同じくらいの高さにまで移っていて、空を
それを見ながら、衛実も朱音の言葉に
「そうだな、そうしよう。
さてと、今日の
「今日出された食事には、変わったところは無かったことじゃし、案外、
「分かんねえぞ? 弥助はこういう時に
「ふふん。では、それを楽しみにでもするかの」
そんな風にくだらない会話を
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