第18話 いざ、八兵衛の反物屋へ
翌朝、
衛実は、机の中央にある
「それで弥助、今日は朱音も連れて、
聞かれた弥助は、
「そうだよぉ。昨日、家に帰った後に使いを出してねぇ。八兵衛さんからも『
「よし、それなら安心だな。弥助、助かるぜ」
「まあまあ、こういうのは、あっしの仕事だからねぇ。あ、朱音ちゃん、お
朱音の湯のみの中の水が無くなっていることに気づいた弥助が、自分のを汲むついでとばかりに気を
「む……、弥助、ありがとう。お願いするのじゃ」
朱音は、まだ
心なしか、
「本当にお前って奴は、朝が弱いんだな」
その様子を見た衛実が『しかたがないな』という顔を浮かべながら、ちり紙で朱音の口元に付いていたご飯粒を
水汲みから戻ってきた弥助も、
「まあまあ、朱音ちゃんもまだ小さいし、そんなもんでしょう。でも朝が弱いっていうのは、ちょっと意外だったねぇ」
弥助の『意外と』という言葉と、自分が朱音に対して
「そうか?
「そうかもしれないけどぉ、この
もちろん、衛実がしっかり守りきったこともあったけどねぇ」
「なんだいきなり。朱音と生きて帰って来れたのは、まぐれだよ」
いきなり自分を
そんな様子の衛実を弥助は、息子の成長を喜ぶ父親のように
「そんな衛実ならきっと、今回の仕事もきちっとやってくれるんだろうなぁ」
『やっぱりいつも通りだな』と心の
「そうやって、変に緊張させるようなこと言ってくるんじゃねえよ。お前に言われずとも、仕事はきっちりやり
「うんうん、頼もしいねぇ」
そう言って、腕を組んで大げさに
それをニヤケた顔で見送った弥助は、今度はまだ残ってご飯を食べている朱音に声をかける。
「朱音ちゃん、身体の調子はどうだい? この街にも、そろそろ慣れてきたかなぁ?」
「うむ。
弥助にもこうして助けてもらっておることじゃし、今の所は、特に問題なさそうじゃ」
それを聞いた弥助は、安心して満足そうな笑顔を浮かべた。
「それは良かったよぉ。まだまだこれから、大変な事もあると思うけど、あっしも出来る範囲で支えていくから、頑張っていこうねぇ」
「ありがとうなのじゃ」
と、ここで朱音は、何か後ろめたそうに下を向いた。
「……衛実も弥助も、わらわに優しくしてくれて
のう弥助、本当は衛実もぬしも、わらわの事を迷惑に感じておるのではないか?」
そう言って朱音は、顔を下に向けたまま、
一方、弥助はと言うと、『なんでいきなり、そんな事を言うんだ?』とでも言うような顔をしていて、朱音の視線に気づくと、顔を横に振って、彼女の
そして、
「そんな事ないよぉ。
ここだけの話、衛実は朱音ちゃんと出会ってから、なんと言うか、前と比べて感情が
それが最近じゃあ、少しだけど笑うようになってきた。それはきっと、朱音ちゃんが衛実と一緒にいてくれたからだと、あっしは思っているよぉ」
そこで話に一旦区切りをつけると、朱音から離れて自分の席に座り直しつつ、話を続けた。
「それにあっしも、おかげ様で、ここ最近は楽しく過ごさせてもらっているよぉ。
朱音ちゃんだけじゃない。あっしらだって、朱音ちゃんに元気を分けてもらっているのさぁ。
時に支えて、支えられて。人はそうやって生きていくものだから。
だからね、朱音ちゃん。これからも衛実と一緒にいてあげてくれないかい?」
「……! 分かったのじゃ! わらわに
………
弥助の
「うんうん、そういうことだねぇ」
そんな朱音を、弥助はいつものように
そうこうしているうちに、朱音も食事を終え、片付けを
それから30分が過ぎた頃には、弥助の店先に、
「それじゃ弥助、行ってくるからな」
「うん、気をつけてねぇ」
「弥助、今日の
「うんうん! 元気がいいねぇ、朱音ちゃんは。その調子で、お仕事頑張ってねぇ〜」
2人のやり取りに、何となく
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