月夜の誓い
「う、ぐ……」
雲一つない空に浮かぶ
そんな彼を、
「おーい、何へばってんだ? まだ休んで良いなんて言ってないぞ」
「な、なんで、俺だけ……」
ジリジリと顔を上げて、
「当ったり前だ、どうせお前中心で始めたんだろ。
「明日もあんのかよ……」
「ちなみに、今日は
「あ、悪夢だ……」
ガックリとうなだれた衛実は、『そうだ、この姿勢のまましばらく休んじまおう』と
しかしながら、そんな息子の
結局、衛実は
それからしばらく時が
「それで? 衛実お前、なんで
一度ちらりと目線を
「…………別に、父さんには関係ねえよ」
「ほ〜? 俺にも話したくねえ、ってか?
そりゃそうだよなあ。でなけりゃ、わざわざあの立て
しかしすぐに『何もかもお見通しだ』とでも言うかのような
「
どうやら当たっていたらしい。衛実の顔全体が、あっという間に赤く
「は、はあ!?
んなわけねーじゃん! 勝手なこと言うんじゃねえ!」
勢い良く起き上がって
「んな
良いじゃねえか、妹を大切に
「うっせえ!
「あ〜あ〜、もう耳まで真っ赤じゃねえか。そんなに妹が大好きだったなんてなあ。将来の
「ヤメロッーーー!」
ついに
「お? まだ立ち上がる元気が残っていたか。よし、なら次の
舞台の役者よろしく、大げさな動作で武器を
彼はバカ正直に父親の
「ナメんなあああッ!」
少年の、
戦いは、衛実がコテンパンにやられて、再び大地に
ひどく体力を
結果は分かりきっていた。いかに彼が
ただそれでも、一度だけでも良いから、いつも
「ちくしょう…………。なんでだよ、なんで俺は、父さんに勝てねえんだ……!」
「そりゃそうだろ。俺が今まで
それともなんだ? お前は、手を抜いた俺に勝ったくらいでもう満足なのか?」
父親が勝ち
「んなわけ、ねえだろ! 俺は、俺は絶対に、全力出したあんたを打ち負かして、最強になるんだ!」
少年が
「………へえ、"最強"ね。それで? 最強になってお前は、その
「その後……って、別に最強は最強だろ? その後なんてあんのかよ?」
「あるだろ。例えばな、お前が言う "最強" ってのは、あくまでこの村の中で、ってだけの話だ。他にも村はあんだろ? そんでお前は、他の村の "最強" にも勝てんのか?
それにな、都には、『自分は最強だ!』なんて思い込んでる
「そ、それは、分かんねえけどよ、でも、勝てるかもしんねえだろ?」
「………………問いを変えよう。衛実、お前は一体、何のために "最強" になるんだ?」
「何の、ために……?」
言葉につまる衛実。いつまで
「衛実。お前、椛は好きか?」
「は!? な、なんだよ急に」
「椛だけじゃあねえ。
「どんな人達って……、んなの、皆大事な人達に決まってんだろ。何当たり前みてえなこと聞いてんだよ」
「そうか。なら良かった。安心しろ、そんな風に考えてるんなら、お前はこれから先、必ず強くなれる。それは俺が保証する」
「ほんとか? ほんとに俺は強くなれんのか? 父さんよりも強くなれんのか?」
「さあな。俺より強くなれるかは、お前の頑張り
ただ、もしお前が今の
「誓って欲しいこと?」
「ああそうだ。もしこの誓いが
いつもは何かと
普段の実戦稽古の時以上に真剣な
「いいか、衛実。強くなりてえなら、今お前が大事に思っている人達を、必ず
どんな奴が相手だったとしても、自分がその場にいる
「………………そんだけ?」
「ほ〜お、『そんだけ』ときたか。そいつは
「心配ねえよ。結局、父さんより強くなりゃ良いってだけの話だろ? だって父さんは、今まで誰かを死なせたことなんて、一度も無えんだもんな!」
自分の考えになんの
「なんだ、たまには
「な、やめッ、だから! そうやっていつまでも子ども
髪わしゃってすんの
(……お前は、きっと強くなるぞ。俺よりもな。だからこそ、その強さとの向き合い方を
けれど、その決意があまりにも予想外な形で、そして、あまりにも早い段階で終わりを
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