第14話 辛勝、そして『これから』
「くたばりやがれ!」
衛実が刃を
「討ち取ったり!」
衛実は、
鬼との
遺骨は衛実と朱音が持ち帰れる分だけを集め、残りは
「今度、日を
出来上がった塚を見下ろして、衛実が
その後、2人は自分達が倒した鬼の
地に
「これが、鬼、なんだよな朱音」
衛実の隣に立って、同じように見下ろしていた朱音も、どこか気の抜けた調子で返事をした。
「うむ、そうじゃな……」
衛実は『朱音の力を借りたとはいえ、よくぞ2人きりという、絶望的な状況から勝利することが出来たな』という
「そういえば、お前は
そして先の戦闘で、同じく怪我を
問われた鬼は、今までのどの時よりも
「そう、わらわが決めたから。ぬしと共にこの旅を続けるために」
そんな様子の朱音に、ちらと視線を向けた衛実は、すぐ隣にいる朱音にすら聞き取れない程の大きさの声で、朱音に対して
「なんて
「……? 何か言ったか、衛実?」
「なんでもない」
普段ならば、聞き返すはずであろう朱音も、今はその気力が起きず、それどころか、さっきからずっと上の空で、何も考える事が出来ていなかった。
朱音が
「これからどうするのじゃ?」
朱音の問いに一旦黙った衛実は、
「……帰ろう。
鬼の死骸を
弥助の店に帰ってきた衛実と朱音は、店の奥でずっと待っていた弥助と
「……てわけで、帰って来れたのは俺達だけだ。八兵衛さん、本当に、
衛実は
だが、そんな衛実に対し、八兵衛は
「そう自分を責めなさらないで下さい、衛実さん。傭兵なら、こんな結末は誰にだって
それに相手は、
あんたもお
そんな
化け物を倒してくれて、ありがとうございました」
八兵衛のかけてくれた言葉に、交戦前まで共に
そんな衛実に弥助も声をかける。
「衛実、お前はもう1つ、やり通したことがあるよぉ。
お前は、朱音ちゃんを最後まで守り通した。それだけやれば、
今日はもう
今は体を
弥助に
「お待たせぇ、八兵衛さん。あんたも優しい人だねぇ」
声をかけられた
「よしてください。ウチだって思う所がない訳じゃあないんですよ。
でもね、じゃあ逆に、あんな 2人を見て
やることやって、その結果がこれなら、ウチはそれを認めるしかないでしょう」
八兵衛の話す事に、弥助は腕を組んで『そうだねぇ』と
「まあ、それはそれとして、ウチの
弥助さん、悪いんだが、あの2人が落ち着いたらでいい。その時はウチの店の手伝いをさせてはくれませんかね?」
衛実達への
そんな反物屋の主人の依頼に、弥助は
「分かったよぉ。2人に伝えておくねぇ。
でもねぇ、」
とここで、反物屋の主人を見つめる弥助の目がすっと細くなる。
「でもねぇ、もし
この時の弥助の様子を、もしも衛実が見ていたとしたら、きっと衛実は『うわっ……』と言って弥助から離れて行こうとしただろう。
それほど彼の放つ
反物屋の主人にとっても、それは例外ではなく、
「
彼らを
それを聞いた弥助は、先程とは打って変わって、今度はいつものような
「
「ああ、よろしく頼みますぜ」
そう言うと、八兵衛はさっさと自分の店へと帰っていった。
「衛実、
2階へと上がり、部屋に入って装備品などの荷物を下ろしていた衛実に、朱音が
弥助の店に
「……ああ、大丈夫だ。ごめんな、お前も
衛実から出てきた言葉は、朱音への
それが何よりも
「何を言うか。ぬしこそが一番大変であっただろうに。
むしろ、すまぬ。あの時、わらわが行くと言わなければ……」
話しながら、どんどん思い
「やはり、わらわは、ぬしと共にはおれぬようじゃ。
わらわがいると、ぬしに余計な苦労をかける。そうなる前に……」
そう言って、力なくふらふらと部屋を出ていこうとする朱音。
しかし、その手が
「も、衛実?」
彼女の肩を掴む手の力が、思いの外強くて驚いた朱音は、ほんの少しだけ顔を衛実の方に向けて問いかける。
彼女を引き止めた体勢のまま、衛実は鼻声になりながら、強い意思のこもった調子で口を開いた。
「朱音、行かないでくれ。俺に迷惑をかけるだなんてことで、俺から離れようとしないでくれ」
それから急に、声の大きさを落とし、何とか
「…………俺をまた1人にしないでくれ」
まるで初めて1人で
「じゃ、じゃが!」
衛実の
衛実は
「何だっていい。お前が俺の
俺はな、朱音。お前と一緒にいた時間が楽しかった。こんな思いをしたのは、
だから、そんなことを言わないでくれ。
それとも、お前は俺といるのが
その
その目に浮き上がっている涙は、今にも
「そんなことはない!
そんなことはないのじゃ!
ぬしと共にいれた時間は、わらわにとっても新鮮で、楽しかったのじゃ!
でも、でもッ………!」
朱音の目から、涙が止めどなく
「わらわの存在は、ぬしに
ぬしを幸せにすると
朱音は衛実に飛びつき、泣きじゃくる。
それを受け止めながら、衛実は口を開く。
「なら、またこっからやり直してくれないか? 俺と共に」
朱音は、まだ涙が流れる顔を上げ、衛実を見返す。
「
「それでもいいんだ。お前が俺と共にいられることに、意味があるんだ。だから、」
衛実は朱音に優しく
「だから、これからもよろしく頼む。
衛実の
「こちらこそ。よろしく頼むぞ、
2人の旅は、まだ始まったばかりである。
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