異聞応仁録 絆ノ詩《キズナノウタ》 〜その日、傭兵は1人の"鬼"と共に歩むことにした〜
流れゆくモノ
ー序幕・決戦前夜ー
そんな中、本来であれば
その男は顔に
『人』とは言い表し
「あと少し……。あと少しで届く。
両目をゆっくりと閉じながら右手を
数秒の間をおいて、カッ、と両目を見開くと、異形の男は己の正面へと顔を向け、その目に映り込んで来た海とそれを越えた先を見据えて、熱に浮かされた声で言い放った。
「今度こそ、あの
そして、最後の
その目は、
空に浮かぶ
力強く、だがちょっとした事で
その光を、そこら辺から適当に運んで来たであろう丸太の上で、
「お前様、」
「……ああ、なんだお前か。寝なくていいのか? 疲れてんだろ、しっかり寝とけ」
もう長い間、自分の隣に
その
「疲れておるのは、わらわだけではなかろう。お前様も少し休むと
"鬼の少女"の言葉に、青年はふっ、と軽く笑いを
そして、
「そういう訳にもいかねえだろ。
もしここで俺まで寝て、いきなり襲われでもしたらどうすんだ?
俺やお前だけじゃねえ。この戦の
……ようやくここまで来れた。こんな所でつまづいちまったら、向こうで待ってるあいつらに、顔向け出来ねえよ」
そう言って青年は、
"鬼の少女"もそれを
短いかも長いかも分からないまま、
「なあ
『朱音』と呼ばれた"鬼の少女"は、なんの気なしに振られた話に一瞬だけ、驚きに目を見開いて青年の方を向く。しかし、すぐに
「うむ、覚えておるとも。
話していくに
彼女に痛い所を突かれた青年は、後ろめたい気持ちがあったからか、たじろいだ様子を顔に浮かべて、謝罪と共に
「悪かったな。けど
「分かっておるとも。じゃが、あの時の出会いがあったから、今のわらわ達が
「…………もう少し、マシな道もあったと思うけどな」
「何を言う。お前様とこうして共に在り続けられるよりましな事なぞ、他に何があると言うのじゃ」
『衛実』と呼ばれた青年の、どこか
そんな彼女の言葉に、彼は少しばかり
「そうか……。そりゃ良かった」
そのまま、もう一度、
(本当に
衛実と朱音が出会ったのは、よく晴れた春先の、桜の花が
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