第11話 邂逅
「
「どうした? 引き返すか?」
衛実は前を歩く朱音が転ばないよう、
「いや、そうではないのだ。それに
「確かに、俺達の中で今そんなことを言うやつは
戻りたかったら、俺が
「大丈夫じゃ。そうではなくて、ぬしに少し聞きたいことがある」
「なんだ?」
「正直に思っていることを教えてくれ。
次、あの鬼と戦闘になった時、ぬしは勝ちきれると思っておるのか?」
衛実は朱音にあまり大きな声を出さないよう注意して、その上で彼女にだけ聞こえる大きさの声で答える。
「そういうことは、部隊の士気を下げることになるから、あまり人前で話さない方がいい。
で、さっきのお前の問いの答えだが、正直俺は次の戦闘には少し不安がある」
「
「さっき俺が話した事を
もしあれが当たっていたとしたら、ヤツは、前の戦闘よりもさらに動きが
俺達の想像を超える状態になっても不思議じゃない奴と、今の俺達が渡り合えるか? ってな
「そうであるか」
そこで朱音は一旦立ち止まると、身に付けていた自分の
「衛実、これを」
首飾りを渡された衛実は一瞬キョトン、とし、それがなんだったのか思い出して、ああ、と納得する。
「弥助の店で買ったやつか。こんなもの一体何に使えっていうんだ?」
「
「気休め程度にしかなんねえが、ありがとな朱音」
衛実の、それほどありがたいと思っていなさそうな返事に、朱音はムッとした顔になって彼を見返す。
「何を言う。わらわの思いがこもった
とそこへ、2人のやり取りをたまたま見かけた周りの傭兵達が、面白がって
「ヒューヒュー、こんな時でもお
2人をからかった傭兵に向け、衛実は『はあ』とため息をつきながら切り返す。
「それ、弥助が言ってることと全く同じだからな。
ったく、これだから女にモテたことの無いやつは」
衛実の挑発に、
「は、はあ!? あんた何言ってんだ!
俺ァなあ、京で1番の
衛実は、『やれやれ』と呆れながら、少しばかりの反撃として、
「それ、絶対カモにされてるだけだぞ。
「余計なお世話だってんだい! ええい、ちくしょうめ!」
そこへ別の傭兵が、衛実にいい
「あんさんそんなだから、ここぞ、って時にふられるんだぜ?
「うるせえ! ほっときやがれい!」
「さて、
「おうよ、やってやんよ!
見てな、俺の活躍はここからだぜ! 待っててくれよ、
だが、その中でただ1人、
やがて
秋には、見事な
奥に進むにつれ、木々が
「なあ、あの男はこっちの方向に逃げたと見て間違いないだろうか?」
傭兵の1人が周りに確認をとる。特徴的なものがなく、辺りも薄暗いと来ては、迷ってしまうのも仕方がない。
手掛かりとなる足跡や血の
「多分、そうでしょう。最後に見た
先程から人一倍気合いの入った傭兵が胸を
先のやり取りから、
と、そこへ強い風が吹き付けて来た。鼻が
「おい、今何かこの風に乗って、物が
「ヤツの
「さて、それはどうだろうか」
「取り敢えず、風が吹いてきた方に向かおうぞ。何か手掛かりがあるかもしれん」
山中に入って、ようやく男の居場所を突き止めたと思った傭兵達は色めき立ち、そのまま風上へと進んで行く。
衛実も後をつけながら、そばにいる朱音に声をかけた。
「大丈夫か? 」
万が一の時に
朱音は途中、何度か
「ッ、大丈夫じゃ」
「さっきに比べたら、だいぶ歩きにくいはずだからな、気をつけろよ」
そう言って、衛実は朱音の方を
「ん? なんだお前、もしかして体調悪いのか? 顔色が良くねえぞ」
「ぬしはわらわの事を知っておるじゃろう? 人よりも鼻が
「何か
「血の
そう言いながら、さらに歩みを進める
その様子を見た衛実も、より一層、警戒の色を強めていった。
「……! ……そうか、注意しておかないとな。
朱音、お前も俺の
「分かったのじゃ。衛実、世話をかける」
「おい! 見つけたぞ! ここじゃないか?」
先頭を行っていた1人が大声で全員を呼ぶ。一行はすぐさま現場へと向かった。
「ここは………」
しかし、決して明るいという訳ではなく、上を見上げれば、背の高い木々の葉が空を隠すかのように
「うわ、一体なんですかいこりゃあ」
それだけでなく、
朱音は思わず、『ひっ』と悲鳴を上げ、傭兵達も
「何ともまあ、気味の悪い場所でさあ。さっさと倒して切り上げましょうぜ」
そう言って、辺りを
が、
「ぐわっ!」
傭兵が負傷する。
「無事か!?」
衛実が襲われた傭兵に
「へへっ、何とか生きてまさあ。こんな所で死ぬわけにゃ、行きませんからねえ」
傭兵は自分が男に付けた時と同じように、
「大丈夫でさあ。これぐらいならまだ動けます。ただ、ちっとばかし血を止めたいんで
「分かった。気をつけろよ」
「了解でさあ」
「衛実殿! あれを!」
その方向に衛実だけでなく、他の者も顔を向け、
そこに『鬼』が立っていた。
「あ、あれはなんでさあ!?」
姿は先程とうって変わり、
この時になってようやく、衛実と朱音以外の全員が自分達の相手してる者の
とはいえ、『鬼』としてでは無く、『人ではない何か
それでも、全員に
「な、なんだっていうんですかい。さっきとは様子が全然違うじゃねえですかい!」
「
「起きちまったことは仕方がない。
衛実の号令で、再び全員が武器を抜き放った。
『鬼』との第2戦が始まった。
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