第12話 修羅
最初に
ただ、先の戦闘からの連戦、さらに山の中を歩いて来たこともあってか、疲れが
(まずい、このままだと
やっぱりここは、何とかして一旦引いたほうがいいか?
だが、あの身体能力じゃ、いずれ追いつかれる。どうするか……)
先程から弓で狙うことも試していたが、鬼の動きが
また、味方を誤射することにも
今、衛実に出来ることは、
それも彼女から離れすぎるわけにもいかないので、全員分、特に討伐を優先している4名はどうしても援護出来ない。
何回か考えを
「悪いが、あいつらの援護に回ってくれないか?」
「へっ?
いやまあ、
ただでさえ、片方は負傷しているのに」
最前線ではないとはいえ、ここも楽ではない。
鬼が飛ばす物の速さは
「大丈夫だ。それにこいつだって、動けるって言ってたぞ。
そこまで大きく動き回るわけでもねえし、何とかなるだろ」
「分かりました。それじゃあ追加報酬、期待していますよ」
そう言って、衛実に頼まれた朱音の護衛は、討伐隊の方に加わっていく。
「へへっ、最初にしくじらなきゃ、俺も今頃は、」
先程、
「
護衛だって大事な役目だ。だから今は朱音を守ることに全力を
衛実が
「わかってますよ、そんなことくらい。
でもまあ、あんさんもよく、この
俺なら絶対に反対しましたし、そうなるよう、あの手この手を使って分からせちゃいますよ」
「俺も、初めはそうしようとしたんだけどな、
手負いの傭兵は返ってきた答えに
「あんさん、なんて言うか甘い
俺が言うのもなんですが、よく
「別にこれで
鬼からの攻撃が飛んできたため、一旦会話を中断し、
「けっ、
「だが、きっとあれは討伐隊から距離を取ったってことだろ?
どうやら1人送って正解だったみたいだな」
事実、護衛から1人が加わったことで攻撃の
「確かに、これならなんとかなりそうで、」
衛実と共に朱音を護衛する傭兵が同意を示した瞬間、鬼の姿が彼らの前から
「どこにいった!? 総員、警戒しろ!」
衛実の警告も
「!?」
「チィッ!
1人が倒されてしまったことで、戦局は、また振り出しに戻る。
だけでなく、討伐部隊が4人、護衛が2人では、状況は前よりも悪い。
「くそっ!」
「
「ッ、何とかな!」
やがて1人、また1人と次々に負傷する者が続出する。
完全に動けないわけではなかったが、巻き返しを
「……衛実さんよ、俺も行かせてくれ。」
「待て、それなら俺が、」
「あんさんはダメでさあ!」
代わりに出ようとした衛実を、傭兵は強い
「何でだ? お前は負傷している。俺が行った方が、」
「あんさんが行って、もし、死んじまったら誰がこの
「ッ!」
傭兵の
「あんさんには、俺達の身よりも最優先で守らなきゃいけないもんがあるでしょう!
優しいのは、いい事でさあ。
けどね、本当に自分が守らなきゃいけないもんを守りきれなかったら、そんなもの、何の意味もありはしませんぜ! 」
傭兵に
「だからね、ここは俺に
衛実が1歩も動かないことを
そしてその直前、振り向くことなく、ポツリと
「すみませんね、あん時少しでも、あんさんの話を聞いときゃあ、こんなことにはなりませんでした。
俺が
そのまま衛実の返事を待たず、突撃していく。
「待て!
衛実が
「も、衛実、わらわも、」
朱音も後に続こうと衛実の前に進み出ると、衛実に強く後ろに引かれた。
「衛実!?」
衛実に
「なっ!」
「
「じゃが! あの者はわらわ達のために!」
「朱音、これが
鬼からの第2撃を
「1つの判断の間違いが、時に最悪の結末を
どうやら今回、俺達はそれをやっちまったらしい」
そう語る衛実の目の先では、さらに1人の傭兵の命が
それをただ
(……思えば、ずっとそんなことを
また1人、腹を
(自分の村を燃やされ、父さん達を失ったあの時から、いつもこんな
衛実と朱音の近くに、誰かも知れない者の
(何の達成感も、
今みたいに、誰かからの言葉に甘えるように勝手に理由付けして逃げ道を作って、
鬼の
それでも、吉之介は何とか踏みとどまって、
鬼の腕に
「……そんでそのツケが
吉之介から抜きとった心ノ臓を
「朱音、この前俺に見せてくれたやつは、今ここで使えるか?」
鬼と朱音の間に立って、静かに武器を
「う、うむ。
「それなら、もう素の姿に戻ってくれていいぞ。それで俺の援護をしてくれ。出来るな?」
「わ、分かったのじゃ」
「くれぐれも無理はすんなよ。いざと言う時は、お前だけでも逃げろ」
衛実の言葉に
「衛実! それは!」
「
鬼が地を
(……これが、鬼の強さ!)
一騎打ちが始まって数分が
先程から、朱音も衛実の援護をしているが、彼らに逆転の機会が訪れるような気配は
そんな中、衛実が腰辺りを目がけて
一瞬だけ顔を
そこを突いた鬼の攻撃により、
すかさず鬼が朱音を
「あっ………、」
「朱音!」
と、その間に衛実が朱音を
(くそっ! 防ぎきれない!)
鬼の鋭い爪が衛実の首筋を
「衛実ェ!」
朱音が
パキンッ!
何かが
その事実に、衛実自身が一番驚いていた。
(確かに俺は
その時、何かが地面に落ちる音がし、衛実がその方に視線を向けると、
(あの首飾りは、朱音の……。………そうか!)
と、そこへ鬼の追撃が衛実を襲う。
それをいなし、反撃を
(あの首飾りが俺を守ったのか。……初めて弥助の品が役に立ったな)
何の意味もないと思っていた首飾りが、初めてその効果を発揮した事に、驚きと (彼にしては
『衛実……、最後に…お前に伝えたいことがある。この先、何が起ころうとも…“生きる”ことだけは、
どんなに
『分かった……。分かったよ、父さん。
俺、父さんが言ったことは必ず
涙ながらに
『それでこそ…俺の、
衛実……強く、生きろ』
そうして静かに手を降ろし、
『父さんッーー!』
ここで回想は終わりを告げ、衛実は
(そうだった。俺は約束したんだ、『生きることを
そしてふと、何かを思い出した様子の衛実は、
それは、
手のひらの上に
(………ありがとう、父さん)
閉じていた目を開いて、形見である数珠を懐にしまい込んだ衛実は、再び自分の武器を力強く握りしめながら、振り返って朱音の
「朱音、無事か!」
「大丈夫じゃ! それよりぬしの方こそ、」
「安心しろ、お前がくれた首飾りのお
そして再び鬼を
「さて、これでだいぶ、てめえの動きにも
そろそろ
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