第21話 京街騒動・開幕
雲ひとつない
八兵衛の言葉通り、店を襲う
そこへ、店の中から2本の短刀を腰に引っさげた歳の若い
「おい、そろそろ交代の時間だ。朝から今までお疲れさん」
自分に向けられた声に気づいた衛実は、
「もうそうな時間か。悪い、気が抜けちまっていたみたいだ。にしても、本当に何も起きねえな」
頭を軽く前後左右に
「無理もないだろう。なんせ、ここに
この店を襲おうとするほどの
その口ぶりはどことなく
衛実もそんな彼の様子を
「だが、八兵衛さんから聞いた話だと、ひと月に1・2回程度は襲いにくる奴らがいるんだよな? それはなんでだ?」
すると若い用心棒は、『簡単なことだ』とでも言うように衛実の疑問に答えた。
「もちろん、そういった奴らがいないとは言ってないさ。
これだけの戦力を
若い用心棒は話の最後に『まあ結局、個人的な能力じゃ、ここの戦力が圧倒的だから、いつも楽勝だけどな』と
彼の話を聞いて衛実は、納得した表情で
「なるほどな。つまりは
「ああ、その
そこで若い用心棒は、衛実の
「それにお前、衛実って言ってたかな?
八兵衛が自信ありげにお前のことを紹介してたから、中々に腕が立つんだろう? なら、きっと上手く対応できるはずだと思っているんだけど、どうかな?」
若い用心棒の少し
「ああ、必ずやり
大事なことを今思い出したかのように問いかけてくる衛実に、若い用心棒は笑顔を作って手を
「
差し出された手を衛実も
互いが同時に手を離した後で、権八が『そういえば』というような顔を作って、衛実に話しかける。
「それより、引き止めて悪かった。とりあえず交代だから昼ごはんでも食べていてくれ。お前の
権八の
「余計な
「ああ、
権八に店の守りを任せ、
衛実が気づいたのと時を同じくして、朱音の方も控え室に入って来た青年を視界の中に
その時の表情は『前から仲良くしてくれている、頼れる
顔を
衛実が席に
「衛実、そちらの
朱音の問いに、衛実は肩をすくめながら答えた。
「どうって言われてもな。ただ立ってるだけだったから、なんにも起こりゃしねえよ。
それより、朱音はどうだったんだ?
八兵衛の読み通り、開店直後から店先に出て
たまに衛実に
衛実の問いかけに朱音は、乗り出した身を引き戻してどっかりと座り込みながら、どこか
「うむ、とても
まさかあそこまで人が集まるとは思いもしなかったのでな。開店から多くの人間様達に話しかけれて、わらわもてんてこ
衛実、八兵衛の店の人気ぶりは凄まじいものであったのじゃな」
そう言いながら、
そんな朱音の横顔を、衛実は『それでも、ここまでの人を集めることが出来たのは、お前のおかげだろうよ』と心の
「とにかく、お疲れ様だな朱音。
よく頑張ったと思うが、まだ俺達の仕事は終わっちゃいない。午後もあるんだから、今のうちにしっかり食べとけよ」
その言葉に視線をこちらの方に戻した朱音は、納得したように
その様子を
「どうした? そのまかないは、お前の口に合わないのか?」
だが、朱音は答えない。むしろ、その言葉を聞いてより面白くなってきたのか、ニマニマとした
朱音の
「なんなんだよ
すると朱音は顔だけを衛実の方へと寄せて来て、目を閉じて口をぽかりと開けながら、『ん』とだけ言ってくる。
「……は?」
衛実がいつまでたっても動き出さないので、不満に思った朱音は口を閉じて目を開けると、
「……むう、ぬしは
それでも、まだ衛実には
「分かんねえよ。なんなんだよ、ったく」
「こういう時は、衛実がわらわにご飯を食べさせるというのが
「はあ?」
衛実はいよいよ訳が分からなくなり出して、
「なんで俺が、わざわざお前に飯を食べさせねえといけないんだ?
『
「……こんな時ぐらい、
衛実と別々になったのが短い時間であることは、朱音も分かっていた。それでも彼がいない所で頑張って来たのだから、せめてこの
「んあ? 悪い、なんて言ったんだ?」
だがそんな朱音の
少なくとも朱音にはそんな
「じゃから、わらわは今、店の売り物を身につけておるのじゃぞ?
そのどこかイライラしていそうな感じを
「それじゃ、これを使え。手ぬぐいで悪いが、汚れるよりはマシだろ。
衛実としては気を
やがて
それからは2人で向かい合うようにして、
先に衛実が食事を
それを不思議に思った朱音は、その
「わらわでも、そのくらいのことは出来るぞ?
朱音の問いに、衛実は『当たり前だろ?』というような顔で自分が取った行動の
「そりゃお前、俺はもうすぐにでも仕事に戻れるが、お前は
それなら、飯の
実にあっけらかんとしたように言うので、朱音は軽く驚いた。そして心の中で『そこまで気を
「そうであったか。いや、なんでもないのじゃ。ありがとうなのじゃ、衛実」
朱音のどこか引っかかるような感じのする
「おう」
そのまま午後からの仕事に向けて準備をゆっくりと進める2人だったが、そこへ
「
「朱音、お前はここにいてくれ。最悪、
衛実の頼みに、朱音も真剣な
「分かったのじゃ。わらわに
朱音の
八兵衛の店を
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