追憶
これは、ごくありふれた、とある
13年前───────
初夏の
大人が1人通れそうなくらいの幅の
前を走るわんぱくそうな少年は、怖いもの知らずといった様子で目を
一方、そんな彼の後ろをついて行く少年は、何か気がかりなことでもあるのか、
「おい
やがて
だが、そんな彼の声も、前をゆく『衛実』と呼ばれた少年の心には届かなかったようだ。
「大丈夫だよ
「そんなこと言ったって、もしこのことが
お説教どころの話じゃない、
「そりゃ"バレたらの話"、だろ?
衛実少年は、どうやら
「そんなこと言って、今まで何度バレてきたんだよ! 村長も言ってたぞ? "次何かしでかしたら、
「だ・か・ら! お前はいつまで父さんの話をすんだよ! あのちゃらんぽらんの言うことなんか、いちいち
「今回ばかりは、そうもいかないだろうが! なんでわざわざ"立ち入り禁止"の所に行こうとするんだ! 立て
「だったらお前、来なきゃ良かっただけの話じゃねえか。もうここまで来たんだ。いい
「そうまでして手に入れたいもんっていうのが、本当にこの先にあるのかよ?」
「ああそうだ! 母さんが
……ほら、水の音が聞こえてきたろ? さあ行こうぜ、源太!」
そう言うと、不思議と力がみなぎってきたのか、衛実は先程よりもさらに速力を上げて駆けて行った。
あっという間に遠ざかっていくその背中を、1人取り残された源太は『ちょ、待ってくれよ、衛実ッ〜!』と
やがて2人は、目的の場所に
ザアアアアッ!
大きさとしては、"そこそこ"といった程度ではあった。それでも、2人の少年達に対しては
衛実と源太は、眼前の滝の力強さに
「………………うっわ、すっげぇ……」
「…………なあ衛実、本当にもう引き返さないか?
源太の弱気な発言が気に
「はあ? 何言ってんだよ源太、ここまで来てそりゃねえぜ。
「当たり前だろ! 見ろよあの滝の勢い! あんなの、どう見たって俺たちに
「大丈夫だって! 俺たちももうガキじゃねんだ。あれぐらい、どうってことねえ! 日頃の
「
源太が滝から自身の横に視線を移した時には、そこにいたはずの親友の姿は
「おーい源太! こっちから行けそうだぜ! お前も来いよ!」
大きく手を振りながら、満面の笑みでこちらを
源太は衛実の強引さに
衛実が
この洞窟は、大人が
「思ったより湿っぽいな……。源太、
一方、源太はというと、洞窟に入ってからずっと
「……うるせえ! んな事言われなくても分かっとるわ。良いから
「んなカリカリすんなよ。そんなんで川ん中に落ちちまったら
「だから、それも分かっとるわ! というか、なんでこんな危ない場所だってのが分かってんのに、お前は考え無しに突き進むんだよ。そんなにその花を見つけるのが大事なのか?」
「ったり前だ。だからわざわざここまで来たんだ。お前の言う事も分かるけどよ、それでも俺は……っと、お……? ここは……」
『……衛実? どうかしたのか?』と
彼らの前には、先程までの
「まさかあの狭い場所を抜けた先に、こんな空間があったなんて……、一体こん中は、どんな
「んなことよりあれ見ろって源太! ほら、あそこ!」
内部の造りに関心する源太に、衛実が興奮した様子で話しかけながら、少し離れた所を指さしている。
その先を
それは、まるでおとぎ話の存在が現実に
「……花、だ。
源太が
「ほらな! だから言ったろ? それじゃ、さっさと
「おい! いくら広いからって、
「わーってるって! 良いから早く、こっち来い!」
つい
彼のとどまる所を知らないヤンチャ
「……やれやれ、相変わらずだな」
そんな事をボヤいて、源太は衛実の元へと向かった。
「ぐぬぬ…………、あと、少しッ……!」
「衛実まだか!? もう……、
目的の物は少しばかり
衛実も源太も顔を真っ赤にして、
「もーちょいだ! 頼む源太、あと少しだけ
友を
「………ッ! よっしゃ! 届いた! 届いたぜ、源太!」
「本当か!? ……ふぅ〜、良かっ、」
ズルッ!
「源太ッ!?」
源太の身が川の中に
「うぐっ!?」
「
しかし、咄嗟に手を伸ばした事で体勢が不安定になったのは衛実も同じだった。となれば、この後、彼の身に何が起こるのか
ツルッ。
「…………え?」
残念ながら衛実は、今自分に何が起こったのか、すぐには
彼の目に
「「うああああああああああああッ!!」」
2人の小さな冒険家達は、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます