自己紹介
「うむ。では手始めに、先に問いかけたものから聞いてゆくとしようぞ!」
ようやくまともに話ができるようになり、『さてさて、どんな事を聞き出してやろうか』と上機嫌な
対して、なぜか正座をさせられている
「……これはなんだ? お前は
「そんな
もはや何を言っても聞き入れるつもりが無さそうな彼女を前にして、何もかもを
「もういい……、それで? "聞きたいこと"ってのは、何なんだ?」
「まずは、ぬしの
彼女の質問は、初対面同士の自己紹介時においてではよくあるものの1つに
『どこから来たのですか?』から話を
しかし、それが
"人"と"鬼"。ましてや今回、"人"の立場にあたる者は"鬼"に多くの物を
「……
衛実は、期待のこもった
質問をした彼女に問題があった訳ではない。ただ
とはいえ、
やはりとも言うべきか、答え終えた衛実が朱音の方に向き直った時、彼女はポカンとした顔で彼を見返していた。
「…………?」
「どうした? 何ぼさっとした顔してんだ?」
「……それだけなのか?」
「は?」
「い、いや、もう少し、何かあるはずじゃろう。
「別に細かく話すほど、大した場所でもねえからな。そう遠くない所だってことが分かるだけでも
「むう………。じゃ、じゃが、何かしら他とは違う所があるであろう? ほんの少しじゃ。ほんの少しで
はぐらかすような答え方をする衛実に対し、朱音は『どうすれば彼からもっと話を引き出せるのか』と、考えを
(……そういえば、
思い返してみれば、彼はこれまで彼女に対して
(もしや衛実は、わらわがどのような者なのかが分からず、
そう考え
「衛実、」
「なんだ?」
「今からぬしに、わらわの
(……急に
だが、どう見ても、ただ
「…………話したいなら勝手に話せ」
「わらわの故郷は、
今もそこで父上や母上を始め、邑の皆と共に山菜を
とりあえずはこんな
(……ここで答えることを
これまでの彼女とのやり取りを思い出してそのように考えた衛実は、やや
「………近くに
もうこれでいいだろ、次だ次」
「そのようなことでは、大した
「そうじゃ!
衛実、先の
そう言いながら朱音は、さながら武士に
音すらも
「あの見事な戦いぶり、やはりぬしは、以前どこかに身を置いておったのか?」
「んなの当たり前だろ。じゃなきゃ今頃、こんな生き方出来る訳がねえ。それに、だ」
衛実は
「こいつは
衛実は朱音が口にした武器と自身の武器の違いをざっくりと話す。とはいえ、
朱音は彼の話に
「それはすまぬ。何せわらわは、ぬしら人の子が扱う武器のことをよく知らぬのでな。
しかし衛実、それにしてはぬしの薙刀という武器、少し変わっておらぬか?」
確かに、衛実のそれを"薙刀"と簡単に表現するには、中々難しい所である。というのも、
さらによく見ると、
「さすがのわらわも、その
そう朱音に
「……父さんから、
そう答える衛実の薙刀を
「そうであったのか……。すまぬ、ぬしにまた
「別に
衛実なりに気を
また、彼もその後に彼女に対して何か言葉をかけるようなことはしなかったため、それからしばらく両者の間に
やがて
「どうしたのじゃ? やはりわらわの問いが気に
「違う。今ので借りは返しただろ。だから、もうここを出る。お前も、いつまでも座ってないで早く準備しろ」
「ま、待ってくれ。まだ、わらわは聞きたいことが、」
「これ以上、お前に話すことは何もねえ。もう行くぞ」
強制的に会話を切り上げて、部屋を出ようと衛実が
"グゥううう〜"
誰かの腹のなる音が部屋中に
『自分のものでは無い』と分かっていた衛実は、その音がどこから発せられたものなのか
そこには、
「…………………お前、腹減ってんのか?」
衛実の問いかけに、朱音は
口には出さぬが、分かりきった"答え"を前にして衛実は、『やれやれ』とでも言うかのように息を
「ほら、これでも
そう言って衛実は、袋から引き出した手を朱音に差し出す。その上には、
「これは……、一体なんなのじゃ?」
「握り
「おに、ぎり…………」
衛実の口から出た言葉に
「別に死にやしねえよ。いいからさっさと、それでも食って腹満たせ」
悪魔が口を開く。まるで彼女に
「……のう衛実、本当にこれしかないのか? 他に何か食べられるものは?」
「
(
鬼の少女は、意を決して、
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