「うどん」
「あぁ、並んでるなぁ。」
長蛇の列に私はうんざりした。けれど、ここのうどんは美味い。他の店に比べると値段も手頃だ。節約している私にとって非常にありがたい。
理想は家から持ってくる、つまり『弁当』が最適解だろう。しかし、私という生き物はめんどくさいことは極力しない。朝や寝る前に弁当を作るというのは、怠け者にとっては苦痛だ。出勤時間もギリギリをせめるためコンビニによる時間もない。
怠け者の朝は時間の許す限り寝る。とにかく寝る。夜更かしなんて当たり前。
いい加減直したいと思うものの、簡単には成長できない。怠け者の特徴といえるだろう。
怠け者の話はさておき、ようやく私が最前列に立つことを許された。私の後ろにも何人か退屈そうに、あるいは腹の虫を抑えながら並んでいる。
期待に胸を膨らませ、いつもと違うものを頼んでみよう、そう決意した。
待つこと5分。割烹着のような白い調理服を着た、顔なじみの大将が現れた。
「すまねぇ。手を滑らせちまって、手をやっちまった。これじゃあ仕事になんねぇ。また来てくれやねぇちゃん。」
大将の手は包帯の上からでもわかるぐらいには真っ赤に染まっていて、手からまだ赤い雫がぽたぽたと落ちている。後ろにいた数人にそれぞれ謝罪し大将は店に戻っていった。
大将の手が無事に治るよう願い、時刻を確認した。
自分に言い聞かせるように小さく頷く。
「すーはー、すーはー。よし。」
怠けることを忘れ、全力でコンビニへ急ぐのだった。
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