「チョコ」

「今日はバレンタインですね。」

そんな彼女の言葉に僕は胸が躍る。女性からアプローチされる数少ないイベント。そんな日に女性に声をかけられれば体制がない私は期待せずにいられない。

「そうだね。チョコくれるの?」

あえてごまかさずに真っ直ぐに聞いてみた。私は声をかけられたくらいでもらえるとは考えていない。理性では分かっている。心証の問題だ。

「いえ。チョコはもっていない無いので。あげられません。」

今の僕は平静を装うことはできているだろうか。からかわれていることは理解している。しかし……

「へ、へーそっか。うん。誰かにあげたりしないの?」

あーだめだ。声が震えている。気持ち悪いだろうな。なんせ生まれてこの方彼女もいなければチョコも受け取ったことはない。

「いえ。あげますよ。」

そういって彼女は僕の頬にキスをして

「リップチョコです。」

そういって彼女は去って行った。

…………

…………

…………

響き渡るアラームの音で目が覚める……

「何だただの夢か。」

けれど、枕の隣にはチョコと手紙が…………

「どうせあんたのことだからチョコもらえないんでしょ。」

持つべきものはできる妹だなぁ……

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