「さけ」

 疲れたときにどのように体を休めるだろうか?私はひたすらに寝る。時間の許す限りに。そうすることで心と身体のコンディションを整えるのだ。だが、今日に限ってはそうではなかった。


 いわゆる飲み会というやつだ。アルコールの力を借りて普段言いづらいことをぶちまける。ただ、ある程度の節度はやっぱり必要で。中には酔い潰れてしまう人も。私はアルコールには多少の心得があるので、周りに煽られて自分のペースを崩されない限り潰されることはない。



 しかし、今日に限って私は潰れてしまった。いや、潰されたと行って良いのかもしれない。気がつくと知らない天井。そして、知らないベットで……私が心の中であたふたしていると不意に良い匂いが鼻を燻る。これは味噌汁か?

「あ、先輩起きたんですね。」

 見ると受付の娘がいた。ラフな格好ではあるがだらしないと感じない。

「昨日のこと覚えてます?私のこと好きなんですか?」

 受付の娘の目は、まっすぐに私の瞳を捉えていた。

「あー、えっと、酔い潰れて覚えてないんだ」

 一目ぼれと言う奴なんだが……



 朝食の世話をしてもらい、私は彼女の家をでた。

「今度お礼に何か渡さないとな。」

 これが妻とのファーストコンタクトだった。

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