「面接」

 控え室の空気はとても重苦しい。なにせ、これから最終面接だ。



 ここにいるものは動機は様々だろうが、ここの会社に入りたくて面接を受けている。中には練習というお題目で受けにくるエリート生もいるかもしれない。



 そう、この僕のように!!


 こんな安っぽい会社に僕のような優秀な人材を納める度量はないだろう。

 成績は常に上位をキープし名門大学に通う。慈善活動を積極的に行い、コミュニケーション能力、向上心、ともに高レベル。凡人が思い描く理想そのものだ。



「それでは次の方どうぞ。」

 いよいよか。これが僕の伝説の幕開けだ・・・内定なんてかっさらってやる。



 扉を3回ノックし

「失礼します。」

 高らかに自信ありげな声を上げる。

 そして静かに歩みを進めいよいよ椅子の横に足を踏み出したそのとき・・・



 数年後、僕はこの会社で当時面接官だった人の下で働いている。今でもあの伝説的な面接は2人きりのときネタにされる。



 まさしく伝説だったろう。椅子に脚を引っ掛け、面接間とゼロ距離で面接を始めてしまったのだから・・・



『緊張しない人なんていない』



 




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