「いたい!」

 娘がイヤイヤ言い始めました。イヤイヤ期に入ってしまった。何かと手のかかるイヤイヤ期。私の頃はどうだったのかと母に聞いてみました。



「あんたのとき、そうね。よく噛まれたわね。」

「噛まれたって?犬じゃないんだから、ははは…………本当に?」

母は静かにうなずいて

「あんた、いろんな物を噛んだりしてたから、イヤイヤ言い始めたときに私の手の甲をガブっとかんできたのよ。子供の噛む力って意外と強いから『いたい!』」って叫んでたわよ」

「う、ごめんなさい……」

母はにこっとすると

「子供のすることだからね。それも自分の。何でも愛おしく思うの。」

「だから、あんたもイヤイヤ期だからってめんどくさがらないようにね。」





 娘がイヤイヤ言い始めた。

「何がいやなのかしら。ほら準備して。でかけるよ。」

すると娘がまだ生えそろっていない、小さな歯をみせてきました。これは……

「おようふくやー。」


私の娘は私よりよっぽど温厚みたいです。

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