航海に出ようよ


ねえ

新大陸を探す

航海に出ようよ

今すぐに

思い立った今日という

この瞬間に

持ち物はさ

ポケットの中に入るものだけ

航海に出ようよ

吠えまくる犬と一緒に

こんな良い天気の日に

わたしたちは出掛けよう

そしてもう二度とここへは帰って来ない

さよなら

大気に散るよう消えて行くだろう

まるで前世のように遠ざかる記憶

学校で先生に「階段に座るな!」と注意されたこと

「ご指摘ありがとうございます!」

一斉にそう言って立ち上がりお辞儀をした

「ふざけるな!」

怒鳴られ往復ビンタ

こんなのってある?

ない

ただわたしたちははしゃぎたかっただけなんだ

はしゃいで酸欠で死にたかった

ペットボトルのラベルを剥がしたりしているうちにいつも夏は終わってしまった

わたしたちは遅すぎる

取り返しがつかなくなってからようやく気付く

そして賞味期限のきれたやばいショートケーキをむしゃむしゃと食べて

おいしいね

だなんて

わたしたちの舌は完全に終わっていた

だから

新大陸を探す航海に出ようよ

コンビニのレシートは入れっぱなしのまま

わたしたちは卒業式には出席しない

終わりは自らの手で下すのだ

ふらりと道に迷ったふりをして

もう永遠にここへ戻って来ることはないだろう

潮風を浴び

きみの最後のリンスの良い匂い

「あんたら素敵な方向音痴だな」

そう船長に褒められた

やったね

わたしたちは笑った

そうしてぐるんぐるん例のやつを回した

道連れなのだ

わたしの感覚に

でもそのおかげできっとくじらに会えるよ

まだ誰も見たことのない凄いやつ

わたしたちは航海に出た

それからかなりの月日が経った

新しい大陸はまだ見つからないけれど

その予兆はある

もしも誰かさんが言うみたいに

この世界が真ん丸なら

離れ離れになったわたしとあなたも

いつか逢えるかもしれないね

その時は

お互いもっと分かり合えるかな?

でも世界の端っこは崖になっていて

そこから落っこちて死んでしまうかもって

わたしはちょっと思っている


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