何も言えない


さくらんぼ軍団が

攻めて来た

わたしは築城して

守りに入った

さくらんぼ軍団は

お堀の周りを埋め尽くした

そして兵糧攻めを開始した

「こんなことじゃあめげないもん!」

わたしは涙目になって

スイカバーが食べられないことを我慢した

禁断症状が疼き出した

うー

いらいらいら

「姫ぇ、これ以上、スイカバーを断つと姫の生命に危険が生じますぞ」

爺が言った

知ってる

でも無いものは無いし

我慢する他ない

我慢?

ああ………わたしがこの世で一番、嫌いな言葉ではないか

わたしは家臣に命令した

「とつげきいいっ」

だが誰も突撃してくれなかった

辺りは静けさで満ちていた

わたしは顔を真っ赤にさせ怒った

「なんで突撃しないのよ!」

側近の一人がわたしの前でしゃがみ込み言った

「姫………実に申し上げにくいことなのですが我が軍の三分の二が既にさくらんぼ軍団へと寝返っております」

なんだってええ

側近が下を向いたまま堀の方を指差した

さくらんぼ軍団に混じってわたしの家臣が直立していた

その手には各々、槍や刀など人を殺すための道具が握り締められている

寝返ると同時にさっきまでの味方に対しての攻撃の準備

はや

(………もう、わたしも寝返っちゃっていいかな?)

それで空っぽになった城をみんなで攻め込むってのはどうだろう?

でもそんなこと口に出したらこの側近にぶっ殺されてしまいそうで何も言えない


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