忘年会を忘れたい


ねえ

わたしの目の前に虫がいるよ

そいつをわたしは無視、出来ない

ギャグじゃない

ただの事実だ

何かが這ってるよ

それ

そこのテーブルの上のおつまみの横

這ってない?

おかしいな

今ここにいたのに

大丈夫、酔ってない

全然

まったくのノープロブレムだよ

………ふう

ねえおかわりちょーだい

駄目?

なんで?

いいからおかわり!

急に大きな声出してごめんなさい

ぺこり

でもおかわりったらおかわり!

やだねったらやだね!

ははは

だからあ

………こほん

ここいらでちょっと休憩

ああおいしい水だね

って

休憩終了

だからあ

もう酔ってるからやめなよとかさあ

そうやって気遣かってるふりとかもうやめてくれないかな

はっきり言ってさ

わたしたちってそういう関係じゃないじゃない?

なんか連れを介抱してる優しい自分みたいなの演出するのやめてくれないかな

ムカつくんだよ

見てると

あームカつく

殺人もしたくなってくる

あのね

ちょっとお前ここに座れ

もう既に座ってるかもしれないけどまた座れ

つまりね

わたしは怒ってるわけ

ぷんすかなの

はははっ

………おい何が面白いんだよ?

ちょっと待て逃げんな

座れ

だから酔ってないってば

わたしの怒りの鉄拳がお前の鼻をへし折って梨畑にさせるぞ?

意味わかんない?

意味か

しかもそいつがわからないときた

テレビの水戸黄門の再放送並みの新鮮さがあるな

予測不可能な展開にハラハラドキドキだよ

てめえらみんなまとめて死ね偽ちょんまげ野郎ども

意味?

そんなものはね

無い

確かにわたしはいま酔っぱらってるかもしれないけど

駄目ですか?

罪ですか?

罰ですか?

その透明なワイン飲みたいね

うん

それをこっちに寄越してくれない

何故ならわたしは超能力者ではないから

勝手に見つめただけでそれがこっちにやって来ることはないから

その透明ワイン

………白ワインって言うの?

でも白くない

おい、お前わたしを騙すつもりかもしれないけどそうはいかないぞ?

などとさんざん訳のわからないことを言って

忘年会で暴れていたらしかった

心優しき人たちの手によって自宅の中に放り込まれソファーでぐー

全く記憶が無い

年が明けてやけによそよそしい人たち

(また、やっちまったのかな………)

と思うがもはや為す術無し


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