撃ち抜く


夏休み

その終わり近く

今年もまた

無意味に時を過ごしてしまった

ああ

何も成し遂げない青春

部屋の中を通り抜ける風は生暖かく

頬に汗が流れた

雨が降るのかもしれないな

蝉はそのことを知っているのか

ますます狂気じみた絶叫を繰り返していた

わたしは撃ち抜いた

撃ち抜かれたそいつはと言えば

落下して

今は床の上で這いつくばっている

うつ伏せの状態でその表情は確認、出来ない

わたしは最初と同じ姿勢のまま

暫くそれを見つめていた

「いち、にい、さん………」

動かない

はい死んだ

ようやくわたしは安堵する

手元の読み飽きた漫画雑誌をぺらっとめくった

漫画に飽きた頃

部屋の中で再びそいつの気配を察知した

(もう生き返ったのか?)

早いな

わたしが顔をあげるのとほぼ同時にその音はぴたりと止んだ

必要最小限の動作で部屋の中を見渡した

天井の一角にそいつの姿を確認した

照準を合わせる

わたしにはこれから先、起こることが既に起こった後のように感じられた

(良い兆候だ)

わたしはそいつを撃ち抜いた

びたんと一度、天井に大きく貼り付いて

のっぺりと剥がれ床に落ちた

派手な血痕が散らばった

わたしの部屋にはそのような跡が無数に点在していた

父や母にはけして見えないけれど


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