第47話 Love
夏休み。
リンと有子は一緒にハンバーガーショップでアルバイトをしていた。最初、引っ込み思案の有子は渋っていたが、欲しい物はバイトして自分で買おう、二人でちょっとした旅行でもしようとリンに誘われて仕方なく付き合っている。
リンと有子はだいぶ打ち解けて、アルバイトが休みの日はリンの家で宿題をしたり、DVD を見たりして過ごすようになっていた。
リンは有子の家にも遊びに行って有子の両親にも会ったが、最初リンは有子の両親を祖父母だと思った。どうやら有子はかなり遅くにできた子どものようだ。そんな有子の家はあまり裕福ではないらしく、電気代を気にしてあまりエアコンも使わないとのことで、有子は暑い中リンから譲られたCross × Check でわざわざ涼みにやって来る。
その日はベッドに並んで座って、アニメを見ていた。冴えない女の子が同級生の少年に熱烈に好かれて押し捲られる。女の子は戸惑いつつもだんだんその少年に惹かれていくという青春ラブコメディである。
リンは、なんだか私とユウみたいだな、最もユウは世界一可愛いし、私には惹かれてないけど、と思いつつ見ていた。
「見た目じゃなく中味を好きになってもらえるなんて、なかなか現実にはないよね。」
有子は独り言のように呟いた。
「私は自分が好きじゃない。たまたま顔が可愛く生まれただけで勉強もスポーツもできない。見た目は良くても中身のない空っぽの価値のない人間なんだよ。」
「そんなことない! ユウは可愛くて、要領悪いけど真面目で努力家で。私はそんなユウを世界一愛してる!」
有子は疑いの目でリンを見た。
「証明できる?」
その瞬間、リンは両手で有子の肩を掴むとベッドに押し倒した。
「キャッ!」
有子は驚いて目を見開いていたが、リンが本気だと悟ると諦めたように目を閉じた。
リンは震える手で有子のブラウスのボタンを外し始めた。
しばらくして、一人の部屋でリンは頭を抱えて机に座っていた。
「私は何てことしちゃったんだよおおお!」
有子はことが終わると逃げるように帰ってしまった。愛を証明するならキスでもハグでも良かったはずだが、全てをすっ飛ばしていきなり最後まで行ってしまったのは、やはりいつもそんなことばかり妄想していたからだろう。
「ユウ、可愛かった。
思い出してリンの顔がニヤけた。それをかき消す様にリンは髪をかきむしった。
とりあえず明日、有子が来たら土下座して謝ろう。もし来なかったら、有子の家まで行って土下座しよう。そう決めたリンなのでありました。
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