第10話 Golden week
ゴールデンウィークを目前にした、ある日の放課後。
「田中先輩、ゴールデンウィーク都合よかったらポタリングでこれやりませんか?」
幸太が美戸に駅前の本屋でもらったというパンフレットを見せた。
『TAMA☆ろくと「巡礼物語!」北多摩TOKYO アニメスタンプラリー』
見ると、東京都の北部、東久留米市、清瀬市、西東京市、小平市、東村山市の5市25か所のポイントを回りスタンプを集めると記念品がもらえるとある。各市に一人ずつメインキャラクターが決められていて、メインキャラクターのいるポイントには、キャラクターの等身大のパネルが展示されている。
ウェブサイトもあるので、美戸はスマホでマップを見た。近隣市の25か所だから、そんなに距離はなく美戸ならのんびり回っても2日あれば余裕だろう。ポイントも結構固まっているのでポタリングにはちょうど良さそうだ。だが、幸太だと1日1つの市を回るのが、やっとだろうから5日かかることになる。
「私はいいけど、佐藤君は家族でどこかに出かけたりしないの?」
「僕んち、連休とかはやることないんです。」
幸太の家は幸太も母も病弱だから旅行や行楽とは無縁なのだと言う。まあ、いいか。アニメやマンガには全く興味はないが、自分もヒマだし、たまにはこういうイベントに乗っかるのも悪くない。連休の飛び石の部分をうまく使えば1日おきに5日取れるから、幸太を疲れさせずに回ることができるだろう。
「じゃあ、やってみよっか?」
「やった!」
幸太は飛び上がって喜んだ。幸太もそれほどアニメやマンガが好きな訳ではないが、ゴールデンウィークにすることがない。美戸がダメなら仕方ないから一人で回るつもりだったが、これで連休中にも美戸に会える。それが嬉しい幸太だった。
そして、ゴールデンウィークが始まった。幸太と美戸は高校で待ち合わせた。まずは地元の
次に
「佐藤君、写真撮ってあげるよ。」
「はい?」
美戸は幸太がこういうアニメやマンガのキャラクターが好きだと思い込んでいるらしい。それは誤解ですと言いたかったが、美戸の笑顔に言い出せなかった。
「佐藤君、笑って笑って。はい、チーズ。」
引きつった笑顔とピースサインで写真に写る幸太だった。
南沢氷川神社に面している落合川の遊歩道から黒目川の遊歩道に回って、東久留米市スポーツセンターに行く。ここのイメージキャラクターは『
二日目は、
ポイントが固まっているので、あっさり終わってしまった。幸太と美戸は高校に戻って、お茶を飲んで少しおしゃべりをして帰った。
三日目は、
『
「気持ちいーね。」
美戸の足が湯をちゃぷちゃぷとかき回す。その健康な白い足が眩しくて直視できない幸太だった。
四日目は
児童施設ころぽっくるの子どもの女の子の『
最後のポイント、コーヒーハウスるぽは森の中の洋館のような喫茶店だった。店内は洋風と昭和が混じった中々素敵なたたずまいだ。『るぽブラザーズ』というコーヒー豆のキャラクターのスタンプを押して、今日は終わりだが、まだ時間に余裕があった。
「佐藤君、お小遣いある? ちょっと贅沢しちゃおうか?」
テーブルに向かい合わせに座って、美戸と二人でカフェオレとケーキ。本当にデートみたいだ。幸太は感動でケーキの味など全く分からなかった。
最後の五日目は
まずは調味料メーカーの直売所であるポールスタアさくら茶屋で双子の兄弟のキャラクター、『蒼守 《そうす》&
最後のポイントは
「田中先輩、一緒に写真に入ってくれないですか?」
「え?」
どんぐりのキャラクターとの写真では、幸太も子どもっぽ過ぎていやなのかな?美戸は思った。
「いいよ。」
スタッフの人に頼んで、二人で並んだ写真を撮ってもらった。これでコンプリートである。帰り道、幸太と美戸は東久留米のイオンモールで記念品のステッカーとエコバッグをもらって家に帰った。
もらったステッカーを幸太はホームセンターで買った写真立てに入れて、机に置いた。このゴールデンウィークは楽しかったな。幸太は写真立てを眺めた。そして怪我の功名と言うべきか、美戸とのツーショットの写真が撮れた。スマホのその写真を見るたび幸太は笑みが浮かぶのだった。
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