第40話 Live 1
もう20年程、昔の話。
幸太の母、
心臓の病気を抱え、まともに通学できるかどうかも分からない祥が大学に進学したのは理由があった。
子どもが欲しい、のである。
祥の両親は祥以外に子どもを作らなかった。それは単にできなかったのか、それとも祥の世話が大変だったとか経済的な理由だったのかは分からない。
いずれにせよ、祥には兄弟姉妹はいなかった。あと数年で自分はこの世から去るだろう。そうしたら両親は年齢的にもう子どもは望めないから、二人だけの暮らしになってしまう。両親のために自分が生きた証として、せめて孫を残してあげたかった。
それで、子どもを作る相手を探すために大学に入ったのだった。
落ち着いて考えれば、初老となって娘が死んで孫だけ残されても困ると思うのだが、思い込みの激しい性格の祥にそんなことを考える冷静さはもうなかった。
とりあえず、イラストのサークルに加入したりしてめぼしい相手を探したのだが、中々うまく行かない。
文字通り命がけで産むのだ。誰の子でも良いという訳には行かない。出産で死んでも悔いが残らないような魅力ある男性の子が良かった。そういう魅力のある男子学生もちらほらいることはいるのだが、やはりそういう男性は人気で競争相手も多い。祥は大学内では評判の美少女だったが、病気の関係で出席日数が少なく、一緒に遊びに行くことも難しかったので、そういう競争では不利であった。
一年が過ぎ、二年生となったところで祥は方針を変えた。すでに人気のある男性は競争が激しいので、とりあえず見た目は置いておいて人柄が良い男子学生を見つけて自分好みに改造すれば良い。祥は網を広げた。
祥は一人の男子学生に目を付けた。ゼミの同期で長野県から上京し一人暮らしをしているという学生である。見た目はダサ坊だが不潔な感じはせず、性格は穏やかで無口だが自分の意見を言う時は知性を感じさせた。
この人は良さそうだ。
祥はゼミの課題で分からないところがあるから教えてほしいと言って、彼に近づき、だんだんと親密になっていった。彼の髪型や服も自分好みにコーディネートし、これならと思った、ある日、祥は彼のアパートで土下座して頼んだ。
「私と子どもを作ってください。」
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