第50話 Repeat
私の名前は
この学校のクラス分けは成績順とのことで、つまり私は何とかぎりぎりで受かったという訳だが、一年前の模試ではD 判定だったのだから受かっただけでも自分を褒めてやりたい。
「マコちゃん、部活はどうする?」
いつのまにか来ていたヒロキ君に声をかけられた。
私がこの高校に受かったのは、ヒロキ君が根気良く勉強を教えてくれたおかげです。ヒロキ君はA組でクラスが別々なのが残念だが、それは高望みというものでしょう。
ヒロキ君は中学からの私の恋人、と言うには私達はまだまだお子ちゃまなのだが、まあカレカノなのです。小学校は別で中学で初めて会ったのですが、私とヒロキ君はどういう訳か気が合った。ずっと一緒に遊んだりしていましたが、この高校の合格発表でヒロキ君が告白してくれて、めでたく正式にお付き合いすることになった訳です。
話がそれましたね。
「ポタリング部って、どうかな? デートに使えそうじゃない。」
「ポタリング?」
「自転車で散歩みたいなこと、するんだって。」
それは良いかもしれない。中坊だった私達のデートは近所の公園か学校の図書室、ショッピングモールといったところで中学校の誰かが必ずいるようなところばかりだったから、手をつないで歩いてたりしようものなら次の日は学校中の噂になって大変だった。
だからと言って、お互いの家に遊びに行って部屋で二人でいると、親が中学生とは言え何か間違いがあっては、と心配しているのが分かってこちらも落ち着かない。
ポタリングとやらで、同じ高校の人がいないところに行けば落ち着いてデートもできようと言うものだ。
それに私が通学で乗っている自転車は、アメリカのメーカーで
「いいね。とにかくは様子を見てこよう。」私は立ち上がった。
私達は二人で教室を出てポタリング部の部室に向かう。部室のある棟は古ぼけて薄暗かった。
カマボコの板を削って作ったらしい『ポタリング部』の札を見て、ヒロキ君はドアをノックした。
「はい? どうぞ。」
私達がドアを開けると、男子生徒が一人座っていた。上履きの色から三年生の先輩だろう。何というか、美人というか可愛いというか、男の人にこういう表現が正しいのか分からないが、すごく可憐な感じの人だ。
「ポタリング部に興味があるんですが。」
ヒロキ君も少し驚いたのだろう。動揺を隠して言ったのが、私にも分かった。
「じゃあ、コーヒーでも飲みながら話しましょうか。良かったら座って。」
先輩はゆっくりと立ち上がった。その先輩はゆっくりだが、それでも手際よくコーヒーを入れて私達の前にカップを置いた。
「冷めてしまうから、まずはコーヒーをどうぞ。」
私達はカップに口をつけた。
「「美味しい!」」
私とヒロキ君は思わずハモった。
「好みでミルクと砂糖を入れて。」
先輩は勧めてきたが、私達はそのまま飲み切ってしまった。
「さて、君たちは、このあたりに住んでいるのかな? 東京と言ってもこの辺りはまだ緑が残っているし、ちょっと足を伸ばせば多摩湖とか平林寺とか良いところはたくさんあるよ。」
「よかったら体験入部ということで、日曜日にポタリングに行ってみない? それで入部しなくても別にいいし。」
「あ、僕はポタリング部の部長で三年E組の佐藤幸太です。よろしくね。」
可憐な部長は私達に微笑んだ。
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