第43話 Pedal
4月8日は幸太の誕生日。
やる気のない部員募集が功を奏したのか、今のところ二人の目論見通り新入部員は来ていない。
今回は美戸が全部用意すると言うので、放課後、幸太は浮き浮きしながら部室に向かったのだった。
「ハッピーバースデー、幸太くん。」
高校の近くのケーキ屋で買ったケーキと幸太が部室に置いているコーヒーセットで淹れたコーヒーで二人は乾杯した。
ケーキを食べ終わると、美戸は
「はい、プレゼントだよ。」箱を出した。
幸太が開けると、中は自転車のペダルだった。日本のメーカー三ヶ島ペタル(誤字ではない。メーカー名はペダルではなくペタルなのだ。)のGamma というモデルで、美戸とお揃いのモノだ。
美戸は幼馴染のリンの影響で、
美戸は立ち上がると上着を脱いでシャツの袖をまくった。工具を手に取って幸太のPep からノーマルのペダルを外すと新しいペダルのネジ山にグリスを塗って手早く取り付けた。
「これで良し。」
美戸は手を洗った。
「もう一つプレゼントがあるんだあ♡」
美戸は幸太の前にちょこんと立って、両手を広げた。
「ほら、おいで♡」
い、いいのかな? 幸太は一瞬迷ったがしないという選択肢はなかった。幸太はふらふら立ち上がると自分も上着を脱いで、おずおずと美戸に腕を回した。
うわっ、美戸先輩、細い。柔らかい。良い匂いする。
少しずつ幸太の腕に力が入り、二人は密着した。
幸太は美戸を抱きしめた。美戸の胸が幸太に当たって、柔らかくつぶれた。
体温が上がって、幸太のコロンが強く香る。二人が触れ合っているところから美戸に幸太の体温が伝わった。
幸太くん、熱くなってる。
美戸は幸太の熱を感じた。
幸太と美戸は目をつぶって、お互いの感触を確かめ合った。
下校のチャイムが鳴って、二人は我に返った。30分近く抱き合っていたことになるが、二人にとっては短く感じられた。幸太は名残惜しそうに美戸を離した。
「またハグさせてもらっていいですか?」
「ハグはたまのご褒美だよ。」
幸太はしゅんとした。あの幸せな感触はたまにしか味わえないのか。
「だから、普段は5分までね。」
美戸はイタズラっぽく微笑んだ。
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