第3話 「気違ひ。」

 鉄格子のなかで、どれだけの時間が経ったことだろう。

 どれだけの時間が経ったことだろう。


 どれだけの時間が経ったことだろうどれだけの、


どれだけの時間が経ったことだろうどれだけの時間が経ったことだろうどれだけの時間が経ったことだろうどれだけの時間が経ったことだろうどれだ


 思考が、まとまらない。

 ひとつのことを考え出すと、止まらなくなる。

 どれだけの、どれだけの、。そのことだけで思考が埋まる。ほかのことなど、考えられなくなってしまう。


 隣からは「すいませええええええええええええええええええええええええんん」という声が延々と聞こえ続ける。永遠に聞こえ続ける。


 うるせえ


「うるせえ。」


「なんだと」

「うるせえって、言ってるんだ。この、」


 俺はたまらなくなり、言った。


「気違いが。うるせえ」


「……この野郎」

 野太い声が、聞こえた。


「ぶち殺してやる」


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