あとがき2.0
「刑務所の中」という作品があります。花輪和一という漫画家がひょんなことから刑務所に入ってしまった。あ、ちなみにこの花輪という方はちびまる子ちゃんに登場する花輪君、の名前のもととなったガロ系の漫画家さんです。
この漫画がめちゃくちゃに面白いのです。なくしてしまいましたが、時々古本を買っては読み返しています。youtubeに映画がそのまま上がっていた気がします。
作品の最後に、漫画評論家が書いていますが「意表を突く面白さである。刑務所の体験記を書いた本はたくさんあるが、どれも全く面白くなかった。なぜなら、刑務所という監獄で受けた仕打ちのひどさを世に訴えたり、文句を付けたり問題提起するようなものばかりだからだ。刑務所は基本的に、罪を犯した者が入る場所なのだからそれがよいか悪いかは別として、看守が厳しいのは仕方がないことだし、食事などの待遇が悪いのも仕方がない。看守が執事のようになることなどありえないし、ホテルのスイートルームのような待遇など、あるはずがないのだ。それらの本とは全く異なるのは、淡々と『今日の食事はこうだった』『ラジオではこれが流れてた』といったくだらない話が続いているのが面白い」
という作品です。この漫画を読んでから、精神病院という場所についての本も読んでみたい、ないなら書いてみようと思ったのです。著者が精神病院に入ったかどうか、はさておいて。
この作品(精神病院の中)を書くにあたってずっと考えていたことがあります。それは精神病院という場所についてどう思うかは、読者に委ねようということです。
しかし、一つ刑務所と全く異なるのは、彼ら、彼女たちは罪を償うために精神病院にいるわけではないということです。
刑務所ではクロスワードパズルをやると、懲罰を受けるそうです。「外で苦労している家族のことを考えろ!」と。しかし患者たちはそういう理由や事情で入院しているわけではないはずです。刑務所であれば、いわゆる人権をある程度制限されるのは仕方がないといえます。極端な話、オウム真理教事件を起こした信者たちが「もっとうまい飯を食わせろ」と主張したところで、誰もがふざけるなと思うはずです。
それが精神病院だったとしたら、そのような主張をしてもそれが実際にひどいものであるなら、積極的に改善されるべきではないでしょうか。
つまり、何が言いたいかと言うとですね、刑務所と精神病院は比較するものではないのではないかということです。
精神病院の中で医者に「あまりにもひどい」と訴えたところ、「何を言っているんだ、刑務所なんかもっとひどいんだ」と言われた、という話を読者の方から聞いたことがあります。僕はそれを聞いてあまりにも酷い言葉だと思いました。なぜそこで刑務所という言葉が出てくるのか。拘束される理由が全く違うではないですか。行動を制限される理由が。
まあ、そんなことが、改めて小説として書いてみたいと思った理由です。
正直、かなり乱暴な表現もあったと思っています。特に、読み手を選ぶ話よなあと思いますし、内容で読んだ人が傷ついてしまうこともあるだろうなと。しかし、ある入院患者が葛藤したこと、それを作品として吐露することが許されないことだとも思えないのです。
葛藤と精神病院という場所を紹介したかった。
そして次の作品にもう進んでいきたかったということも。
途中、コメントをくださる方がいらっしゃいました。応援してくださる方もいらっしゃいました。前回執筆作「ぼくとみすずと就労支援」の時もそうでした。ひとつのアクセス数、一人の、読んでくださる方。夜書いた話に、朝起きて管理画面を見るとアクセスが4付いている。応援してくださった方が2人もいてくれた。きっと皆さん同じ気持ちだと思いますが、これほど「もう少し頑張って書いてみよう」という力になることはありません。
本当にありがとうございます。
誰も書くことのできないなんて全く思いませんしドグラマグラなんて凄いですが、読んだ価値があった、と思っていただければこんな嬉しいことはありません。
時間を見ては加筆修正したいと思いますが、今は書きたいことがたくさんあります。森の中の廃墟を探検する話とか、社会問題とか問題提起とかは置いておいて、新しい小説を書いてみたい。
そういえば、この作品を書いているとき、二つの映画を思い出しました。
「カッコーの巣の上で」「17歳のカルテ」
どちらも精神病院を舞台とした作品で、特に前者はまさに閉鎖病棟の厳しさを描いた作品。久しぶりに調べてみましたがAmazonあたりで500円くらいでネット配信しているようでしたので、興味があれば、ぜひ。17歳のカルテは精神病院をテーマにした、少女の成長の物語。
さよならは言わず。
精神病院の中 赤キトーカ @akaitohma
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